2014 Fiscal Year Annual Research Report
論文・書籍の電子化にともなう査読制度の変容に関する文化生産論的研究
Project/Area Number |
23530618
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 一橋大学, 商学研究科, 教授 (00187171)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | ピアレビュー / 研究評価制度 / 電子化 / 査読 / 日英比較 / ゲートキーパー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学術情報の電子化にともなって転換点を迎えている査読制度及び学術情報に関わるゲートキーピング一般について、その実態と変容の背景について明らかにしていくことにある。 平成23年度と平成24年度は、国内の状況の分析を中心とした。人文社会科学の分野に焦点をあて、研究者および学術出版関係者に対する聞き取りを通して、著者と編集者との社会関係が軸となる意思決定にもとづく学術書の刊行の背景として、学術ジャーナル等に関する査読制度の未整備という事情があることを確認した。その一方で、欧米の学術出版社および大学出版部等での刊行経験のある著者への聞き取りを通して、欧米においても、実際には査読が名目的な手続きにとどまる場合もあるという点が明らかになった。また、電子ファイルとして公開されるワーキングペーパーや機関リポジトリ等の普及によって、匿名性の維持が困難になっていることがこのような状況の1つの背景であることも確認できた。 平成25年度と平成26年度は、研究の範囲を広げて国際比較に重点を置いた。平成25年度には、英国において約6ヶ月間の、聞き取りを中心とする現地調査と資料収集にあたり、国家レベルの研究評価制度の分析を進めた。最終年度である平成26年度には、以上の研究成果の集大成として、英国の研究評価制度の歴史と機能を中心テーマとする英文の論文をまとめた。また、二次資料の分析を通して、英国における2008年前後からの制度変革の経緯に関する分析を進めた。 以上の研究成果は、平成27年度に開始される予定の、科学研究費助成による、研究評価制度に関する国際比較研究に受け継がれる。同研究では、研究分担者2名および海外研究協力者2名を含む研究体制のもとに、主として日英の制度の比較を通して、選択的資源配分および大学間の機能分化という政策が持つ効果と意図せざる結果に焦点をあてていく。
|
Research Products
(2 results)