2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530620
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊豫谷 登士翁 一橋大学, 名誉教授 (70126267)
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Keywords | グローバリゼーション / 移動 / 総力戦体制 / コミュニティ / 場所 / ネオリベラリズム / 多文化主義 / 格差 |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバリゼーションという用語をキーワードとして研究されてきた事象を、社会学からどのように捉え返すことができるのか、グローバリゼーション研究という研究分野に対して、社会学がいかなる貢献をできるのか、を再考することであった。用語としてのグローバリゼーションは、市場化や標準化、あるいはネオリベラリズムや文化を含めたアメリカ化など多様な意味で用いられ、国内外の研究機関において制度化が図られてきているが、その課題は必ずしも明確ではない。本研究では、グローバリゼーションと呼ばれる事象が、世界のあらゆる地域を巻き込み、政治や経済から文化や社会までの広範囲に浸透する、時代の変化としての同時代性に着目し、(1)諸事象の共時性、(2)それを分析するための学問分野の組み替え、(3)歴史としての現代、の三つの水準で、研究枠組みの整理を試みてきた。 社会学という観点から問題提起をする上で選択した課題は、人の移動であり、移動から場所を考えると言うことであった。課題を遂行するために1)社会学における研究動向をフォローする研究会、2)三・一一以降の衝撃を受けた社会科学におけるパラダイムの転換を考察する研究会、3)人の移動を新たな視角からとらえる試みとして人文科学の研究者との共同研究、の三つの研究プロジェクトに関与してきた。これら研究会の研究成果は、1)に関しては、『移動から場所を問う』の続編として『移動という経験』(有信堂)、2)については、『コミュニティを再考する』(平凡社)、3)については、『帰郷」の物語/「移動」の語り』(平凡社)、を公刊した。これらを全体としてまとめあげ、グローバリゼーション研究としての問題提起と枠組み提示、とくにグローバリゼーションとコミュニティ、グローバルとナショナルの相補的な補完、総力戦体制からグローバリゼーションへの歴史的転回に関しては、残された課題である。
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