2012 Fiscal Year Research-status Report
社会学の公共性とその実現可能性に関する理論的・学説史的基礎研究
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23530625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
出口 剛司 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (40340484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤堀 三郎 東京女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30408455)
飯島 祐介 東海大学, 文学部, 講師 (60548014)
伊藤 賢一 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (80293497)
高橋 知子(渡會知子) 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (10588859)
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Keywords | 社会学の公共性 / 理論と実践 / 規範理論 / 社会システム論 / 批判的社会理論 |
Research Abstract |
平成23年度に引き続き、研究分担者、研究協力者を交えた研究会(社会学思想史研究会)を東京大学本郷キャンパスにて定期的に開催(月1回)すると同時に、日本社会学会大会(札幌学院大学)において、テーマセッション「実践からの社会学理論の生成と変容II」を主催した。雑誌掲載論文、刊行図書を除く本科研及び定例研究会の成果は、平成24年度成果報告書をとしてまとめている。以下、平成24年度の具体的な成果について述べる。 まず、申請書の「研究目的」及び「実施計画」に従い、ドイツ及びフランスの社会学と68年との関係を解明した。とくにアルチュセール、ブルデュー、ハーバーマスの国家論、権力論に関する考察を行い、そこから国家と市民社会に対するこれまでの理論化の問題点を解明すると同時に、新たな概念化の可能性を明らかにした。また情報化と消費生活の深化を体系的に把握するために、アドルノ文化産業論の批判的再検討を行った。さらに理論と実践との接合をめざし、ドイツにおける家族政策、移民政策の検討を行い、社会システム理論の政策的応用可能性について明らかにした。学会テーマセッションでは、本科研のテーマに加え、ダニエル・ベルとアメリカ社会学及び知識人の公共空間における機能、移民研究における理論の役割、戦争社会学の理論的射程に関する討議がなされ、社会学の公共性に関するより具体的なイメージを得た。本年度の最大の成果は、テーマセッションにおいて、本科研にかかわる研究分担者、協力者以外の国内外の研究者からの応募があり、「理論と実践」という本科研の中心課題に正面から取り組むことができた点にある。 今年度はさらに、日本における社会学理論の受容及び独自展開にも着手した。具体的には、本科研の全体研究テーマと関連させつつ、清水幾太郎のジャーナリズム空間における役割、批判的社会理論の日本における独自展開に関する研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本科研研究の中心的な課題は、独仏及びアメリカ社会学の理論的遺産を継承しつつ、理論と実践の新たな関係性を志向することにある。こうした観点から、主として社会システム理論、批判的社会理論、リスク社会論、アルチュセール、ブルデューのイデオロギー・権力論に対する検討を積み重ね、一定の成果を得ている。さらに平成24年度は、平成23年度実施状況報告書の「今後の推進方策」に記したように、交付申請書作成当初の計画に加えて家族政策、移民政策といった具体的なイシューと社会学理論との関係や、実証研究の場面における理論の果たす役割、公共空間における知識人の機能といった各論に至る詳細な議論を積み重ねることができた。また日本独自の社会学の展開や日本における海外理論の受容と独自展開に関する議論を深めることもできた。とりわけこれらの成果を得る過程で、本科研主催の学会テーマセッションに対して、本科研の申請メンバー以外の研究者や、海外の研究者からの応募があったことは当初の予想を上回る大きな成果である。以上の点から平成24年度の研究実績は「当初計画以上」に進展していると評価できる。平成23年度(既刊)、24年度(準備中)の実績は成果報告書として公表されることをあわせて付記しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに平成23年度、24年度(準備中)の成果報告書を作成し、研究成果の外部発信を行ってきたが、平成25年度は本科研の最終年度にあたるため、過去2年間の蓄積を総括し、より積極的に外部発信を行う。まず、1. 例年と同様、日本社会学会大会におけるテーマセッションに応募する。すでに「実践からの社会学理論の生成と変容」という題目で研究代表者の出口(東京大学)が2年連続応募しており、学会の規定を超過するため、平成25年度については、研究分担者の赤堀(東京女子大学)が「社会学理論への時代の要請/時代の要請の社会学理論」として新規に提題を行う。2. 本科研の定例研究会(社会学思想史研究会)においても過去2年間の総括を行うと同時に、上述の日本社会学会のテーマセッションに合わせ、グローバル化、情報化、消費生活の深化を背景に新たに生成しつつある「社会的なるもの」に対する概念化と理論的枠組の検討に重点を置く。その際、可能な限り、グローバルな観点から研究を行っているゲスト・スピーカーを招聘し、本科研の研究成果を相対的な視点から総括する。3. 2014年ISA横浜大会を念頭におき、研究成果のグローバルな発信をめざした準備作業に着手する。研究分担者は、達成された成果に関して各自海外での学会報告を通して外部への発信を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、学史・理論の基礎研究を主たる課題としているため、例年通り、予算の多くは関連する資料費(図書購入)と成果公開のための学会出張旅費、成果報告書の作成費に充てられる見込みである(平成24年度の成果報告書は同年度からの繰越金により執行の予定)。出張旅費及び図書などの資料費に関しては、代表者、各分担者が自身の割当の範囲で執行することとする。全体の成果報告書の作成(平成25年度分)については、代表者の管理分(平成25年度分)で行うこととする。ただし、平成25年度の成果報告書が本科研全体の最終報告書となるため、予算の許容する限り、過去2年度分よりも作成部数を増やすことが見込まれる。また、テーマセッションを主催する日本社会学会(平成25年度)は東京(慶応義塾大学)にて開催されるため、研究代表者が管理する予算を低めに設定する。代表者の旅費は、主としてゲスト・スピーカーの招聘、日本社会学史学会等の地方開催の大会(京都・佛教大学での開催予定)の出張旅費に充当する見込みである。研究分担者の旅費については、海外での学会報告が予定されているため、旅費の多くが海外出張旅費に宛てられる予定である。
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Research Products
(16 results)