2012 Fiscal Year Research-status Report
NPOにおける社会的行為の組織化とそれが地域社会に及ぼす影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
23530626
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中里 裕美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 講師 (20555586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平本 毅 立命館大学, 産業社会学部, 講師 (30469184)
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Keywords | スウェーデン / 相互行為・社会関係 / 社会ネットワーク分析 / 地域通貨 / まちの縁側 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの目的は、サードセクター領域の組織のなかでもとくにソーシャルキャピタル論との親和性が高いと考えられる「地域通貨」ならびに「まちの縁側」を対象事例とし、①これらの二組織における取引行為およびコミュニケーションという社会的行為の組織化の原理を明らかにするとともに、②この二つの社会的行為を促進する/による蓄積されるソーシャルキャピタルの様相を探り、③これらの活動が「つながり」の回復という観点から地域社会にどのような影響を与えうるのか、どうすればそれらの活動を活性化できるのかを明らかにすることである。 本研究プロジェクトの2年目にあたる昨年度においては、代表者と分担者がIJCCR(International Journal of Community Currency Research)に投稿した論文が掲載されたことに加え、筆者らのこれまでの地域通貨の社会ネットワーク分析研究について、『社会と調査〈第10号〉特集ネットワーク調査の問題と展開可能性』の中にまとめることができた。 このほか代表者は、日本において過去10年以上にわたり取り組まれている千葉県千葉市の地域通貨組織における取引記録の社会ネットワーク分析を行い、その結果を『専修経済学論集』で発表した。さらに、本研究プロジェクトのもうひとつの対象である「まちの縁側」については、宮城県仙台市および山形県天童市の「まちの縁側」における調査研究(インタビュー調査・参与観察)を行うことができた。 また分担者は、コミュニケーションにおいて人々が経験を語り合い、それによってネットワークを形作る様子を分析し、その結果を『現代社会学理論研究』で発表した。さらに分担者が専門にする会話分析の分析手法を『社会言語科学』で紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの「研究目的」に沿った形で、昨年度にひきつづき代表者・分担者ともに「地域通貨」の取引行為と「まちの縁側」のコミュニケーションという二つの社会的行為の組織化原理の解明に向けた調査研究をさらに進めることができたと考えている。 まず地域通貨については、スウェーデンの事例のみならず、共同研究という形で千葉県千葉市において活動を行う地域通貨組織の10ヶ年分の取引記録データの社会ネットワーク分析を行い、その構造的特徴量を把握することを通してそれが地域社会にどのようなつながりをもたらしているのかを考察することができた。 あわせて、今年度の「まちの縁側」の調査を行うための基盤作り(宮城県仙台市および山形県天童市の「まちの縁側」において運営者ならびにそこに来ている利用者に対するインタビュー調査と参与観察)を進めることができた。 なお、昨年度は代表者と分担者が共同で2本、それ以外に代表者は1本、分担者は2本の論文を執筆し、それらは国内外の学会誌に掲載されたという点からも着実な研究成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトをはじめるにあたって「交付申請書」に記述した3ヶ年間のスケジュールの3年度目(平成25年度)の研究計画に沿った形で、ひきつづき研究を進めてゆくということで、研究分担者および協力者らとの合意が得られている。 とくに代表者は、山形県天童市の「まちの縁側」における調査研究(インタビュー調査・参与観察)に加えてビデオデータの収録を行い、分担者が専門とする会話分析手法を用いて、そこで行われているコミュニケーション行為の詳細を分析する。そして、「まちの縁側」のソーシャルキャピタル醸成機能および地域社会への影響を検討するとともに、「地域通貨」と「まちの縁側」の比較分析および考察を進める。 また分担者は「まちの縁側」活動を普及するNPO団体に所属しているが、現在このNPO団体の打ち合わせ場面のビデオデータを収集しており、このデータからNPOにおける社会的ネットワーク形成過程を分析することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年度目は、国際学会誌IJCCRに投稿した論文の校正作業に注力することに決め、スウェーデン調査研究のための渡航を延期し、国内の調査研究の基盤作りを中心に進めることにしたため、研究費の次年度繰越しが生じた。このように判断したのは、今年度に計画されている国内・外の継続調査ならびに成果報告の海外発信に予算を補充できた方が、本プロジェクト研究全体にとってより大きな成果が得られると考えたためである。 本プロジェクトの今年度の研究費の主な使用用途は、最新の研究動向をふまえて国内外に研究成果の発信を行うためのものであり、代表者はLinks Center Workshop(於ケンタッキー大学、アメリカ)への参加費および外国旅費、分担者はIIEMCA(国際エスノメソドロジー・会話分析学会、於カナダ・ウォータールー)での研究発表に係る外国旅費や英文校閲費が必要になる。 また、国内の「まちの縁側」に対する継続調査を行うための国内旅費、ならびに必要に応じて、デジタルヴィデオカメラ機器の購入とビデオデータのスクリプトの書き起こしに携わってもらう補助者に対する謝金が必要になる予定である。さらに、本研究プロジェクトの『成果報告書』の印刷・製本費が必要になる。
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