2013 Fiscal Year Annual Research Report
比較近代社会論の成立過程―後発資本主義の「精神」をめぐる独日の知的苦闘―
Project/Area Number |
23530629
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
野崎 敏郎 佛教大学, 社会学部, 教授 (40253364)
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Keywords | 比較歴史社会学 / 近代社会論 / 国民精神 / 資本主義の精神 / ドイツ資本主義 / 日本資本主義 / マックス・ヴェーバー / カール・ラートゲン |
Research Abstract |
平成25年度には、戦後初期や近年の諸研究をトレースし、国民精神研究、比較近代社会論、および日本近代社会研究にかかわる論点を整理した。そのなかで、渋沢栄一の商業道徳論にかんする新資料を発見した。また渡独調査と東京調査によって、ヴェーバー、ラートゲンらに関連する資料を蒐集した。 渡独調査を一回実施した。ドイツ連邦公文書館コブレンツ館において、マリアンネ・ヴェーバーのエルゼ・ヤッフェ宛書簡を閲覧し、第一次世界大戦後のドイツの状況を考証した。プロイセン文化財枢密公文書館において、マックス・ヴェーバー遺稿集およびフリードリヒ・アルトホフ遺稿集を閲覧し、日独関係にかんする新知見を得た。ハンブルク国立公文書館において、カール・ラートゲン関係資料を閲覧し、彼の日本研究にかんする新資料を得た。また、日本の図書館に所蔵されていない稀覯本を、ハンブルク大学で閲覧した。バイエルン州立図書館手稿室(ミュンヒェン)において、ヴェーバー夫妻遺稿集を閲覧し、バイエルン学術アカデミーにおいて、ヴェーバー関連資料を閲覧した。これによって、彼の初期および晩年の活動の一端を解明した。 東京調査を一回実施した。国立国会図書館憲政資料室において、阪谷芳郎関係文書を閲覧し、阪谷の学生時代のノートから、ラートゲンの東京大学における講義活動の内容を詳細に知ることができた。 研究期間全体を通じて、第一に、日独近代において、国民精神の動揺と危機が深化していたことが判明した。そしてこの危機にたいする対処が、日独でかなり異なっていることもみえてきた。第二に、この危機にともなって、後発資本主義における国民精神の動因が重要な課題であったことを明示できた。第三に、資本主義の「精神」にかかわる諸問題は、今日の新自由主義における精神の危機にも通じていることが判明した。これらの論点のいくつかを、雑誌論文において明示することができた。
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