2012 Fiscal Year Research-status Report
社会調査データの分析モデルにおけるランダム行列理論の応用
Project/Area Number |
23530630
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中井 美樹 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (00241282)
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Keywords | 共分散行列 / カテゴリカル変数 / 社会学的データ / 欠損データ |
Research Abstract |
本プロジェクトを開始して2年目の今年度は、1年目の成果を深化させた。今年度の主要な成果は3点ある。 第一に、平成23年度から取り組んできた行列理論と線形代数を新たな手法へと拡張させることに取り組み、さらに課題も明確にすることが出来た。一般的に、社会調査データを活用した計量社会学的研究においては、連続変数とカテゴリカル変数とを統一的なフレームで解析するのは困難であり、したがって本研究の目的の1つは、カテゴリカルな確率変数間、カテゴリカル-連続変数間、連続確率変数間の共分散を計量的に導出するための統一的なフレームワークを定式化することである。この課題に対し、多次元空間内における幾何学的オブジェクト(シンプレックス)で表される、より一般的な方法を考案することを試みた。この新たな手法は、連続データ間についてもカテゴリカルデータ間についても、さらに連続-カテゴリカルデータ間についても分散共分散の評価が可能となると考えられる。 第二に、シンプレックスのアイデアを応用した統一的なフレームワークに基づいて社会学的データを分析する際の共分散行列計算のためのアルゴリズムを構築し、実際の社会調査データのカテゴリカル変数・連続変数間の共分散を得た。従来の手法との差異、従来の手法と比較した本研究に基づく手法のメリットを検討した。上記2点の今年度の成果にかんしてまとめた論文を、現在、海外のジャーナルに投稿中である。 第三に、上記の研究を進める過程で、社会学的サーベイデータを分析するうえで不可避的に直面する一つの大きな課題である、欠損値 missing data への対処について、詳しく再検討する必要性に気づき、既存研究の再検討を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究第2年目も、開始1年目同様に、おおむね計画通りに研究を進めることができた。社会学データ分析法の中で取り組むべき課題であるカテゴリカル・データ変数の分析法について、近年提案されている相関行列に基づく先行研究をまず検討し、その上で、新たな手法に基づく社会学的データ分析のためのアルゴリズムを構築した。さらに、このアイデアを実際の社会調査データ分析に適用し、成果を論文にまとめることができた。ただし、現時点では、大規模データから主要な変数をいくつか抽出した限定したデータセットに本アルゴリズムを適用した。 なお、この研究をすすめる過程で起こってきた新たな課題である、本手法の適用における欠損値データの扱いについては、さらに慎重に検討を進めることが必要であるが、こうした新たな課題に気づくことができたことも本研究の更なる深化に結びつくと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画はまず第一に、新たに考案した手法を大規模な社会調査データに適用し、分散共分散行列の計算を行うことである。2012年度は社会調査データからいくつかの連続および離散変数を抜粋した比較的小さなデータセットに本手法の適用を試みたが、2013年度はそれを一層拡張し、多数の要素の計算を行う。 第二に、本手法による分散共分散行列の計算の際に、ランダム行列理論を活用する。これにより‘ノイズ’と‘情報(=真の値)’の部分の識別を適切に行うことができると考えられる。パラメータを同時推定する際にデータから統計的ノイズを除いて得られる精緻なパラメータの推定量と、従来の方法から得られた結果とを比較することによって、本プロジェクトで提案する手法の適用から新たな社会学的知見が得られる可能性を検討する。こうした手法は近年すでに、経済物理学や多変量解析において学際的に応用されてきており、本研究では社会学的調査データの分析にそれを適用する。 第三に、社会学的データへの応用により新たな社会学的知見を得るべく研究を深化・発展させ、そこで得た成果を次の論文および国際学会等において発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大量の社会調査データ処理のために高性能パソコンを購入する予定である。さらにランダム行列理論やその応用研究にかんする最新の研究動向を検討し、前年度までに構築した分析モデルを社会学的研究に応用するために、引き続き、海外共同研究者の協力をあおぎながら研究を進める。それを可能にするためには、年に数度の研究会開催を行うことが不可欠であり、そのための研究打ち合わせ旅費が必要となる。 加えて、研究成果を国際学会や英文ジャーナルに投稿するため、プルーフリーディング費用や会議出張などの出張旅費も必要となる。
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