2011 Fiscal Year Research-status Report
美容実践を通じた中高年女性のアイデンティティの実証研究:世代・メディア・国際比較
Project/Area Number |
23530633
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
谷本 奈穂 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (90351494)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 身体 / 美容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中高年女性が美容実践(美容整形と化粧)を通じて、どのようなアイデンティティを形成しているのかを明らかにすることである。平成23年度は、1文献・資料の収集、2アンケート調査、3整形経験者・コスメフリークに対するインタビュー、4データの比較検討、仮説的モデルの提示を行う予定であった。実際には次の通り研究を遂行した。1:文献と資料の収集については予定通り行った。整形と化粧に関わる学術的な文献を収集し、また、学術だけではない、女性向け雑誌や一般書など、人々の美容実践の動機付けに影響を与えてきた文献も収集した。2:アンケート調査も予定通り行った。2003年より行っているアンケート調査(合計1365名、20歳代)と同じ質問項目を用い、また新たな項目もつけたして、より広い年齢層(25~65歳)の800名に対して実施した。年齢比較、男女比較、美容に関心のある人の規定要因など、現在、アンケート結果は分析中である。3:インタビューについては、予定通り整形経験者に対して2名行っている。それだけではなく、美容整形施術を行う医者へのインタビューも4名に対し行った。美容外科、美容皮膚科の意識や、アンチエージングに対する考えの聞き取りを行った。それらのインタビューデータの文字起こしはいずれも完了している。4データの比較検討、仮説的モデルの構築は現在行っている。なお、1~3以外に、平成23年度にすすめたことは、日本美容外科学会への出席、花王株式会社の研究員との意見交換、女性雑誌のテキスト入力などである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、中高年女性が美容実践を通じて、どのようなアイデンティティを形成しているのかを明らかにするために、次の四つの手法を用いて遂行する予定にしている。1国内外の文献調査、2一般の中高年女性へのアンケート、3中高年女性のうち、美容整形手術を経験した人、コスメフリークの人へのインタビュー、4メディア言説の内容分析。その際には、文献による理論研究とアンケート・インタビュー・内容分析による実証研究の両方を行うことに留意する。平成23年度には、文献調査は行えており、さらに、アンケートも行っている。特にアンケートに関しては、次年度以降に、それらのデータ分析を通じた、若い女性と中高年女性との意識比較が行いうる環境を整えることができた。インタビューについては、確保し得た整形経験者が2名であったので、もう少し増やしたいところであるが、すでに他2名のインフォーマントを確保しており、次年度以降も継続して聞き取りを行うことができる。また、施術を受ける女性側だけでなく、施術する医者にもネットワークを広げ、インフォーマントを確保し、すでに4名のインタビューを行っていることから、目的のおおむねは達成できていると判断する。メディアの内容分析については、平成23年度の調査予定に入っていなかったものの、先取りする形で、雑誌記事のテキスト入力を行った。次年度以降の研究がスムーズになると予測される。したがって、全体として、おおむね順調に進展していると言えるだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、本研究課題はおおむね、予定通りに遂行されていると言えるので、今後も、申請時と同じ推進方策をとる。すなわち、国内外の文献調査の「理論研究」、アンケート調査、および美容整形手術を経験した人・コスメフリーク・美容外科医・美容皮膚科医へのインタビュー、メディア言説の内容分析などの「実証研究」の両方を行う。最終的には、メディアと実際、若者と中高年などの比較検討を通じて、総括的な中高年女性のアイデンティティ像に迫っていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一には、今後も、引き続き、整形に関する文献・資料の収集を行う。第二には、メディアの内容分析、および比較検討を開始する。すでに女性雑誌のテキスト入力を開始しているが、さらに雑誌を増やして、テキストデータの量を増やす。入力については業者に依頼する。第三には、インタビュー調査を継続する。すでに整形経験者、および、美容外科、美容皮膚科に対し行っているが、さらにそういった人々に聞き取りを行う。と同時に、コスメフリークや美容ライターと呼ばれる、化粧品について尋常ならぬ知識を持つ人々にも聞き取りを開始する。その際の、出張旅費、謝金に研究費を使用する。最後に、翌年度に繰り越した研究費分で、追加のアンケートを行う。今回研究費が繰り越せたのは、調査協力を依頼したアンケート会社が初回契約ということで、従来の半額以下の価格で調査をしてくれたことに起因する。現在、平成23年度のアンケートを分析している途中であるが、今回のアンケートだけでは語り得ない側面を認識し、再度、追加の調査を行う必要がある。したがって、繰り越せた分を、翌年度のアンケートに使用し、さらにブラッシュアップした調査を行う予定である。
|