2011 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワークアプローチによる「食」をめぐる集合行為の検討
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23530635
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
星 敦士 甲南大学, 文学部, 准教授 (90411834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 正武 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40451497)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 社会運動 / スローフード / ネットワーク |
Research Abstract |
今年度は、スローフード協会の事務局関係者に近年の運動展開の動向と課題、東日本大震災の影響に関するヒアリングを行い、併せて本研究計画で実施する調査への協力依頼を行った。当初計画では、次年度にスローフード協会の会員を対象とした運動へのコミットメントと社会ネットワークに関するアンケート調査を行う予定であったが、団体関係者に対するヒアリングを重ねるなかで、地域組織間の運動に対する認識や活動実態の分散が極めて大きいことが明らかになった。そこで、当初計画よりも早期に組織調査を行って運動全体の特徴と実態を明らかにする必要が生じたことから、組織調査の準備を行った。今年度の研究成果は以下のとおりである。1. 全国のスローフード協会(コンヴィヴィウム)の活動を調整・サポートするスローフードジャパンの執行部のメンバーを中心に行ったヒアリングから、イタリアで生起した運動を日本で受容してきた過程とその過程における理念や目的に関する合意形成、具体的取り組みの内容が明らかになった。「スローフード」という概念の曖昧さが運動参加の障壁を低くしている反面、運動理念の共有や統合を妨げており、テーマによっては支部間でも合意形成が難しい現状が明らかになった。2. 一方で、スローフード気仙沼関係者へのヒアリングでは、震災からの復興を含めたまちづくりの理念として「スローフード」に焦点が当てられており、行政、教育、地域産業に携わる人々の間に形成されているゆるやかなネットワークを基礎付ける概念になっていることが示された。今年度の調査からは、運動に対する理論付けと、ネットワーク内に多様性を維持する仕掛けの重要性が示唆された。3. 各種のヒアリングの成果を踏まえて、組織調査の調査票を作成した。調査票の内容は、活動分野、活動の活発さ、運動のプロモーションとリクルート、組織特性と外部環境、ネットワークなどである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、運動に参加している個人を対象としたアンケートをH24年度に実施し、その後に組織調査を行う予定であったが、ヒアリングの過程でまず運動の多様性を把握する必要を指摘する声が多かったことから、組織調査の実施を先行することとした。この変更で研究計画全体の遅れが懸念されたが、前倒し請求を行って準備と調整を進めた結果、H24年5月に調査を行うことになったので、計画内での調査の順番は入れ替わる形になったが、達成度としては概ね順調である。スローフード協会の事務局関係者に対する近年の運動展開の動向と課題、東日本大震災の影響に関するヒアリングもほぼ順調に行われたが、研究分担者の調査予定地が東日本大震災の影響を大きく受けていることから今年度は調査を行うことができず、この点は進捗がみられなかった。しかし、文献サーベイによる理論枠組みの整理とスローフード運動への応用に関する検討、社会運動研究にネットワーク的視点を取り入れた文献の収集と調査法の検討は進められており、次年度以降のヒアリング対象者と調査地の再検討は必要であるが、今年度は当初計画において予定していた研究を実施することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 組織調査によって得られるデータを用いて、組織単位での運動の活性度に対して組織特性、外部環境、ネットワークが与える影響を分析する。2. 個人単位の調査内容と方法について引き続き運動関係者からのヒアリングを行うとともに、研究会を通じて回収率を高める調査手法を検討する。3. H25年度の事例調査に向けて、組織調査データ分析と合わせて予備調査を行う。4. 2.と3.については、東日本大震災の影響が研究を遂行する上での課題となることが予測される。2.で述べた個人単位の調査実施が難しい場合は、事例調査で扱う地域数を増やすこと、あるいは、震災の影響が小さい運動支部を複数抽出してその所属会員に調査を行うことなどが対応策として考えられる。3.で述べた事例調査に向けた予備調査についても、運動を一時的に休止している支部もあることから、調査時期を順延する、調査対象地を変更することなどが対応策として考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度から準備を進めてきた各地のスローフード協会(コンヴィヴィウム)を対象とした組織調査を5月に実施する。調査終了後は、そのデータ分析を行って国内運動の特徴を把握する。またデータ分析の結果を用いて、スローフード協会の所属会員を対象とするアンケート調査のサンプリングフレームを検討するとともに、調査法についても研究会を通じて有効な手法を設計する(実施時期や採用する調査法は対象団体との調整で決定する)。この他、当初計画でH25年度に予定している事例調査に向けた予備調査を行う。具体的には、活動の特色、組織形態別に都市部と地方を含めた数カ所のコンヴィヴィウムの関係者にヒアリングを行って調査の枠組みを検討する。スローフード活動がまちづくりや教育、地域産業、地方メディアと結びついている事例など、組織間ネットワークとして描くことができる市民活動の具体的事例に関する資料を収集し、H25年度の事例調査の準備を行う。
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