2012 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワークアプローチによる「食」をめぐる集合行為の検討
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23530635
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
星 敦士 甲南大学, 文学部, 准教授 (90411834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 正武 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40451497)
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Keywords | 社会運動 / スローフード / ネットワーク |
Research Abstract |
今年度は前年度より企画・準備を行ってきたスローフード協会支部(コンヴィヴィウム)に対するアンケート調査を実施した。またそのアンケート調査の結果に基づきながら、組織特性や活動内容において特色のあるコンヴィヴィウム数カ所のリーダーや事務局担当者、会員を対象に、参加のきっかけや運動組織をまとめていくプロセス、過去の社会運動参加の経験、他組織との連携のあり方についてヒアリングを行った。今年度の研究成果は以下のとおりである。 1. コンヴィヴィウムを対象とした組織調査から、日本におけるスローフード運動の特色として、生産者との交流や食育事業に積極的に関与している一方、生物多様性の保護や自然環境保護への関心は高くないことが示された。また、組織的な特徴として、公式化・集権化・専門分化の3指標から比較すると、組織の成り立ちや参加メンバーの属性によって同じ目標をもった運動内部においても支部レベルでは多様な組織特性がみられることが示された。 2. この調査結果に基づくヒアリングからは、運動を持続的に展開できているコンヴィヴィウムに共通した背景として、コンヴィヴィウムを立ち上げる以前からまちづくりや地域の食文化に関するネットワーク、あるいはサークル的つながりがあったことが示唆された。また運動内部のつながりを外部の公的な活動に接続していくことが組織を活性化している事例も観察された。 3. 会員個人を対象としたヒアリングからは、運動への参入経路としてのネットワークの重要性が示唆されたとともに、理念の理解や受容は事後的に進められること、スローフードという言葉の解釈の多様性が運動のゆるやか展開を維持している(強い政治的メッセージを打ち出すことをしない、そのような運動に忌避感を感じる人びとの受け皿になっている)ことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、運動に参加している個人を対象としたアンケートをH24年度に実施し、その後に組織調査を行う予定であったが、ヒアリングの過程でまず運動の多様性を把握する必要を指摘する声が多かったことから、組織調査の実施を先行することとした。この変更で研究計画全体の遅れが懸念されたが、本年度に組織調査を実施し、データ分析の結果に基づくヒアリングも進めることができたので、達成度としてはおおむね順調である。ただし、当初は本年度に会員個人を対象としたアンケート調査の実施を予定していたが、組織調査を先行させたため、調査を行うことができなかった。この点については、スローフード運動のナショナル・オフィスであるスローフード・ジャパンと継続的に調査内容や方法について協議を進めた結果、次年度に会員個人を対象としたアンケート調査を実施する目処をつけることができた。これによって、本年度のヒアリングからも示唆されている運動参加におけるネットワークの効果を計量的に析出するという本研究の中心的な目標も達成することができる見通しがたったことから全体として達成度としておおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 会員を対象としたアンケート調査に用いる調査票を作成するため、運動へのコミットメントとネットワークの測定方法を研究会を通して検討し、プレテストの評価に基づきながら測定項目と内容を決定する。また回収率を高めるための方法論も検討する。 2. アンケート調査を実施し、得られたデータを用いて運動参加の経路としてのネットワークの効果を計量的に分析する。また「スローフード」という解釈に多様性のあるシンボルに対して、どのように理念や目標、運動展開の方法を共有していくのかという集合的アイデンティティの構成におけるネットワークの機能についても分析を行う。 3. 本年度にデータ収集した組織特性と会員調査のデータを合わせて運動へのコミットメントに関する多水準の要因を含めた分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画ではH24年度にスローフード運動に参加する個人会員を対象としたアンケート調査を実施する予定であったが、H23年度の事例調査から運動支部レベルの分散が大きいことが示されたので組織調査を先行させる必要が生じたため未使用額が発生した。次年度は当該助成金と合わせて研究費の大半を会員を対象として実施するアンケート調査に使用する。具体的には、調査資材(対象者の宛名ラベル、各種封筒、依頼状、調査票等)の作成、事前予告状の発送、調査票の配布と回収、督促状、調査謝礼、結果の概要の作成・発送にかかる費用、データ入力と整理にかかる費用である。その他としては、本年度に実施した組織調査データの分析から明らかになった組織特性として、あるいは活動内容として特徴的なコンヴィヴィウムを対象とした事例調査を継続して行うために使用する。
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Research Products
(1 results)