2013 Fiscal Year Research-status Report
社会ネットワークアプローチによる「食」をめぐる集合行為の検討
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23530635
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
星 敦士 甲南大学, 文学部, 准教授 (90411834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 正武 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師(Lecture) (40451497)
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Keywords | 社会運動 / 社会ネットワーク / スローフード |
Research Abstract |
今年度は、スローフード協会に加入している会員を対象としてアンケート調査を実施した。有効回収票数は424件、調査後に判明した非該当ケースを除いた有効回収率は36.5%であった。調査項目は、運動参加のきっかけ、運動へのコミットメント、運動を通じて知り合った人々との関係、運動理念や目標の受容、今後の運動参加意欲、他の社会運動参加の経験、政治的有効性感覚、購買行動における選択基準、食をめぐる社会的問題への関心である。年度内に行った基礎的な計量的分析の結果、以下の点が明らかになった。 1. 運動への参加および今後の参加意欲は、運動参加によって得られている満足度ややりがい、居場所感といった心理的なコミットメントに大きく影響を受けている。一方で、運動理念の受容や運動の活動内容、方針、方法をめぐる周囲の人々との合意や共有は、参加度合いや意欲に直接的な影響を与えていない。この点から、今日の表出的、価値志向的な社会運動における動員や参加をめぐる議論で指摘されてきた運動参加によって得られる「おもしろさ」や「楽しさ」の重要性が裏付けられた。同時に、運動の正しさや正当性だけでは動員することが難しい今日の社会運動をめぐる社会的状況も示唆された。 2. しかし、分析結果から運動理念の受容や周囲との合意・共有、運動を通じて形成された友人・知人関係の広がりは、それ自体が満足感ややりがい、居場所感を高めることも明らかになっており、不定形で流動的とされてきた「楽しさ」や「おもしろさ」も、従来の社会運動論において展開されてきた動員構造論やフレーミングの概念によって説明可能であることも示された。 アンケート調査と並行して行った事例調査、ヒアリング調査では、これらの分析結果を解釈する上で参照すべき会員個人や関連団体の食をめぐる社会運動に対する考え方、運動への意味づけについて参加者、非参加者の意見を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度を前にして、スローフード運動を組織調査アプローチ(各地で活動を担うコンヴィヴィウム(=運動の拠点)が運動を持続的に展開するためにはどのような要因があるのか、他組織・他団体との関係など社会ネットワーク的な特徴を中心に検討すること)と会員調査アプローチ(運動参加者の参加要因を先行研究の分析枠組みと社会ネットワーク論を架橋する形で測定し分析すること)の2つから理解することを通して今日の社会運動における社会ネットワークアプローチの有用性を検討するという本研究の基本的な調査計画が達成された。これらの調査結果を具体的な活動の実態のなかで理解する、解釈するという部分は当初の計画よりやや足りないと考えているが、これについては最終年度の研究活動のなかで成果公表とともに補うことができると思われるので全体の達成度としておおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 本年度までに収集した質的・量的データの分析を通して、今日の社会運動における動員と参加を理解するために社会ネットワークアプローチがどのくらい有用なのか、それはどのような形で影響を及ぼしているのかを明らかにする。 2. 分析結果を具体的な活動の実態のなかで検討するため、数地点の事例調査を補足的に行う。 3. 研究成果をとりまとめて公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、研究分担者が予定していた山形県調査(スローフード山形、農業関連の事業協同組合、在来種保護に関する研究会等の事例調査)が調査日程の調整がつかず今年度実施できなかったことに起因する。 研究分担者が今年度実施できなかった事例調査は、次年度に予定している事例調査とは別に改めて実施する。
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Research Products
(1 results)