2014 Fiscal Year Annual Research Report
知識・サービス経済における新しい男性性―福祉雇用レジームの変化に関する基礎的研究
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23530641
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今井 順 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30545653)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 男性性の変化 / 雇用の多様化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に行った実地調査の分析を進めてきた。まず明確になったことは、日本のサラリーマン男性性は日本的経営の形成とともに形作られてきたが、その変化も雇用の多様化や労務管理の変化とのかかわりにおいて考察できるということである。対象企業においても雇用の多様化や正規雇用に対する成果主義の導入が顕著であり、男性性に関わる諸変数に対するその影響を確認できた。労務管理制度の変化・運用については、対象企業でも全国調査と同様の傾向が観察でき、正規雇用者に対するフレキシビリティとコミットメントの要求は相変わらず高い。その結果正規雇用男性の家事への参画はどうしても限られたものとなっている。特に、意識の上では男女協業的であっても、労働時間や疲れがそれを許さないという状況は、企業と労働者の関係性が男女の役割分業や性別秩序に与える影響の大きさをあらためて確認させるものであった。 非正規雇用男性の中には、積極的であれ消極的であれ、企業への従属的なキャリアや生き方から距離を取るような生き方を模索している人たちがいた。非正規雇用で働く男性は、正規雇用労働者であることのプレッシャーを引き受けることと、自分の生活に対するさまざまな裁量を維持することへの志向性の間で、矛盾を抱えながら生きている。非正規雇用にとどまる人々には、転勤やサービス残業などを含む、正社員としての責任を回避したいという欲求が強く存在している。これは企業中心社会からの自立志向とも捉えうる志向性と言うことができるだろう。ただし、現状こうした態度や意思を「堂々と」示すことが難しいようである。彼らが実際に得られている賃金や安定性、それに対する社会的評価は高いとは言えず、そうした現実を目の前にして、彼らは自分たちの選択が正当なものだという確信が得られないでいることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)