2011 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティにおける地域内格差と排除・連帯・参加に関する実証的研究
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23530642
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (20321995)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地域コミュニティ / 地域形成論 / 伝統的地場産業 / 排除・連帯・参加 |
Research Abstract |
1.研究目的の概要 地域固有の文脈に埋め込まれた権力構造が基層をなす地域では、そこにグローバル化による階層構造が重層化され、地域コミュニティにおける参加・連帯からの排除状態が生じやすいと考えられる。本研究はこうした歴史的地域構造を把握しつつ現在の排除・連帯・参加のありようを捉える地域形成論を展開するため、東北における伝統的地場産業集積地とその関連地域を中心に実証的研究を行っている。初年度の平成23年度は主に以下の点で研究した。2.研究実績(1)地域構造把握のための資料収集 歴史的な地域権力構造が現代地域コミュニティにおける排除・連帯・参加問題にどのような影響を及ぼしているか考察するため、現地調査および関連の歴史的・郷土資料を収集した。藩政末期から近代に至る東北地域の権力構造には、幾重にも入れ子状態になった中央と地方との関係がみられ周辺地は産業振興においても様々に支配下におかれてきた。しかし支配関係は必ずしも単線的ではなく、藩や国家のみならず近隣の産業集積地における地方有力者間の攻防などで地域が形づくられてきたことが確認できた。(2)地域づくりに関する動向把握 秋田県南地域、特に伝統的地場産業集積地を含む湯沢市の地域づくりに関連する事業展開の状況把握を行った。平成17年3月に市町村合併した湯沢市は地域活動の支援体制も広域化し、特定の地場産業支援体制は難しくなっている。一方で、集落人口の高齢化、減少傾向がみられるなか、平成22年度から新しく地域自治組織の活動支援事業が開始されており、住民主体の活動が活発化しつつある。いくつかの集落を事例に地域活動に関わりつつ現地調査を行った結果、小規模高齢化集落においては一定程度の連帯、参加のプロセスをみることができた。一方、伝統的地場産業集積地周辺は、今後さらに実証的研究が必要であるが、排除や格差状態が顕在化しやすい傾向を捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象地の固有の地域構造や隣接地域との関係性を把握するため、研究課題に即して当該地域や伝統的地場産業に関する関連資料・現地調査集計データの再整理を行う計画であったが、現地調査も含めた一連の再整理作業が十分に進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成23年度で不十分だった研究の継続 主な対象地である秋田県南地域における現地調査および歴史・郷土資料収集、また伝統的地場産業集積地や地域づくり活動に関連する県内外の地域比較考察のための現地調査を十分に行うことができなかったので、次年度はこの点をできる限り補っていく。そのうえで、2.以下に当初予定していた次年度の研究計画をあげる。2.新たな現地調査の計画と実施 データ集計・分析により浮かび上がる地域構造をより詳細に分析するため、現地においてさらに必要な調査をおこなう。前年度調査内容に加え、新たに排除的状況等をできうる限り把握する調査を計画し実施する。具体的には個々の伝統的地場産業関連従事者の廃業や転業といった社会移動的状況や生活の現状を把握できる調査や地域づくりへの参加状況を把握できるような調査を検討実施する。さらに、関連地域の状況を把握するため、必要に応じ県内外の資料収集、現地調査を行う。3.理論的整理・考察 平成23年度の研究計画を継続しつつ、これまでの研究に関連する理論的考察を深める。シティズンシップ研究における社会変動と参加の議論や社会的排除・包摂論、社会的連帯論などを援用し、具体的な対象地域における社会問題の相互関連性(関係性)を理論的に説明する。4.研究報告・論文、報告書等の作成 調査・考察がある程度まとまった時点で研究論文、報告書等の作成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究を進めるため、おもに現地調査のための旅費および資料収集のための経費に研究費を使用する計画である。
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