2012 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティにおける地域内格差と排除・連帯・参加に関する実証的研究
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23530642
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (20321995)
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Keywords | 地域コミュニティ / 地域形成論 / 伝統的地場産業 / 住民参加 / 小規模高齢化集落 / 地域づくり |
Research Abstract |
1.小規模高齢化集落の維持・活性化事業に関する事例調査 平成22年度から開始された湯沢市における市民協働のまちづくり事業について、平成24年度までの住民主体の活動は引き続き活発化しつつある。いくつかの集落活動を事例に調査を行った結果、小規模高齢化集落においては支援事業を活用して住民による様々な活動へのチャレンジがみられている。しかし、行政による集落維持・活性化に関わる支援事業が縮小ないし終了した場合にも継続していくかどうかは今後も経過を見る必要がある。また、集落支援事業を活用した住民活動の質的な課題がみえてきた。本来、集落支援事業は地域生活の課題に対応する住民活動の活発化を意図している面があるが、そうした意図とは異なり、イベント化する傾向にあったり、住民参加、世代間交流が不十分であったりする状況がみえてきた。 2.地域資源を活用した住民参加の地域づくりに関する動向把握 横手市における住民参加の地域づくりの事例研究で、少子高齢化、市町村合併等といった社会変動により地域固有の社会構造、社会関係に変化が生じ、地域資源を活用した住民参加のまちづくりが可能になるプロセスを捉えることができた。この事例研究については学会発表を行った。 3.伝統的地場産業集積地における地域内格差の把握 伝統的地場産業である漆器産業関連の事業所等について、ある程度関連従事者の廃業、転業等の社会移動的状況を把握することができた。製造業の中では仏壇製造における廃業が目立つが、一方で漆器産業においては兼業があることで著しい廃業状況はみられない。ただし高齢化した職人のリタイアが進み後継者不足をさらに加速化させている状況がみられる。また、同地域では伝統的地場産業自体が地域資源としての潜在力をもつと考えられるが、現時点で地域住民組織による地域づくりの活動と産業とが強く結びついて状況は確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・横手市における地域資源を活用した住民参加の地域づくりに関する事例研究は中間報告的に学会発表し、その内容をまとめて論文として投稿したが、諸事情により研究時間の確保が困難となり、現時点でまだ完成できていない。 ・小規模高齢化集落の支援事業に関わる現地調査は、主に横手市や湯沢市内で参与観察を重ねることができたが、まだそれらのデータをもとに研究発表できるかたちに整理することはできていない。 ・湯沢市の伝統的地場産業集積地における排除・連帯・参加状況等を空間的に把握する調査はまた着手できていない。 ・これまでの調査によるデータ整理が不十分であり、まだ理論的な整理、考察を十分に進められる段階に至っていない。 ・複数の事例研究を同時並行的にやってきているために一つ一つの研究に対して明確な成果を出すことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成24年度で不十分だった調査研究の継続 これまでのデータ収集・分析で不十分な点を補う意味で、事例研究の対象地においてさらに調査を継続し、研究成果としてまとめられるようにする。具体的には、前年度まで行ってきた地域資源を活用した住民参加の地域づくりに関する調査、②小規模高齢化集落の維持・活性化事業に関する事例調査等を引き続き行う一方、これまで不十分であった①伝統的地場産業集積地における排除・連帯・参加状況等を空間的に把握する調査を計画し実施する。必要に応じ、県内外の資料収集、現地調査も加えて行う。 2.事例研究をもとにした理論的考察の深化 上記1.の研究内容を実施しつつ、これまでの研究に関連する理論的考察を深める。市民・住民参加の議論や社会的排除・包摂論、社会的連帯論などを援用し、対象地域における社会問題の相互の関連性を理論的に説明できるようにする。 3.研究報告・論文、報告書等の作成 調査研究の結果をもとに考察をまとめ、研究論文、報告書等の作成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の調査研究を進めるために、現地調査、資料収集、学会発表、報告書作成等に研究費を使用する。
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