• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Research-status Report

社会的排除と反グローバリズム運動:底辺からの新しい共同性創出の可能性

Research Project

Project/Area Number 23530645
Research InstitutionIbaraki University

Principal Investigator

稲葉 奈々子  茨城大学, 人文学部, 准教授 (40302335)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords社会運動 / 社会的排除 / 都市底辺層 / ホームレス / グローバル化 / 反グローバリズム / ネオリベラリズム / 公共圏
Research Abstract

今年度は社会的排除をめぐる貧困運動が、1990年代以降に活性化した反グローバリズムのなかで遂げた変遷についてインタビューと資料収集によりデータを構築した。日本ではおもに東京の山谷と渋谷、大阪の釜ヶ崎の野宿者運動、フランスではそのカウンターパートである住宅への権利運動を対象とした。 いずれの運動も2000年代初めには、国境を越えた動員が行われた反グローバリズム運動の一環を成し、世界社会フォーラムや反G8の運動に参加している。対抗サミットや抗議行動を中心とする運動のなかから、日常生活や運動のプロセスにおける直接民主主義やエコロジーを訴える運動と親和的な主張を展開するようになった。一時的なイベント時の抗議だけではなく、日常性のなかでも主張されていることの実践が求められた結果、抑圧的と認識される関係性を再生産しない行為が追求され、決定における直接民主主義、「共同炊事」、協同組合的な事業形態などが発達するようになった。 それによって社会運動の敵対性の水準が、日常のミクロレベルから国境を越えたマクロな政治レベルまで広い範疇で認識されるようになった。日本においては、日常レベルの水準では敵対性というよりは、新たな共同性を求める形で発展しており、運動そのものが自己目的化する傾向もあった。一方で国家レベルに敵対性を定めてきた運動は、住居といった基本的人権レベルでの要求もミクロな日常水準で調達しようとすると、さらにマージナル化が強化されるという矛盾も観察された。 フランスにおいては、日常性の抵抗の水準で運動が発達するよりは、官僚的な国家機構のなかに同盟者を見いだす方法で運動が展開しており、国家と市民社会の関係性に変容が生じていた。日本とは異なり、日常的な水準での直接民主主義へのこだわりがなく、むしろ運動自体が制度化されていき、参加者の関係性は官僚的な組織機構によって処理される傾向が観察された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度の目的は、運動の担い手に対するインタビューを行い、1990年代に生起した反グローバリズム運動のその後の展開を明らかにすることにあった。インタビューは順調に進んでおり、予定どおり日本とフランスで10人程度に対して、複数回のインタビューを行い、主要なメンバーに対する聞き取り調査はほぼ終えることができた。これら主要なメンバーから、他の主要な人物の紹介をうけることもできた。参与観察による調査も、複数のイベントに継続的に参加し、同時に聞き取り調査を行っている。国際学会での報告も行い、論文も英文で成果として公表した。

Strategy for Future Research Activity

さらにインタビューの回数を重ねて、データの収集を続ける。現在は野宿者運動を中心とした聞き取り調査を行っているが、2年目からは野宿者運動を基盤とする「持たざる者」の運動が1960年代以降の運動の連続線上のなかで、どのような共同性の基盤を形成してきたかを明らかにするために、インタビュー対象者の射程を広げる。また、対象とする運動についても、過去に「持たざる者」の運動の形成に寄与した運動、現在、「持たざる者」の運動から発展した運動についても調査を行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

インタビューの回数をできる限り増やすため、主要な使途は旅費に使う。また、1960年代以降の運動については、申請者にとって新たな領域であるため、調査協力者に専門的な知識を供与してもらい、インタビュー対象者も紹介、同行してもらい、資料収集にも協力してもらうため、謝金も支出する。

  • Research Products

    (7 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) Presentation (4 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 人々の怒りを聞け─フランスにおける「社会運動」の現在2011

    • Author(s)
      稲葉奈々子
    • Journal Title

      社会運動

      Volume: 376 Pages: 10-20

  • [Journal Article] 社会的排除に抗する社会運動のオルタナティブ性 ─日仏の貧困の当事者運動からの考察2011

    • Author(s)
      稲葉奈々子
    • Journal Title

      理論と動態

      Volume: 4 Pages: 71-86

  • [Presentation] Voir les mouvements des Sans pour comprendre la situation sociale apes l’accident nucleaire2012

    • Author(s)
      INABA Nanako
    • Organizer
      Colloque de la fondation maison des sciences de l’homme-Table Ronde Vivre a Fukushima ?- Japon : L’apres-desastre(招待講演)
    • Place of Presentation
      Paris
    • Year and Date
      2012年3月20日
  • [Presentation] The Framing Process of the Anti-Poverty Movement in Japan2011

    • Author(s)
      INABA Nanako
    • Organizer
      Association for Asian Studies
    • Place of Presentation
      Honolulul
    • Year and Date
      2011年4月1日
  • [Presentation] Le processus de la pauperisation des femmes philippines au Japon : creation d’une nouvelle communaute2011

    • Author(s)
      INABA Nanako
    • Organizer
      CONGRES INTERNATIONAL FRANCOPHONE DE PSYCHIATRIE TRANSCULTURELLE(招待講演)
    • Place of Presentation
      Paris
    • Year and Date
      2011年4月19日
  • [Presentation] 隠蔽された貧困をいかにして可視化するのか─日本のデータが示す現状2011

    • Author(s)
      稲葉奈々子
    • Organizer
      第5回多言語・多文化社会研究全国フォーラム
    • Place of Presentation
      東京外国語大学
    • Year and Date
      2011-11-27
  • [Book] Comparison of Poor People’s Participation in Social Movements in France and Japan in Social Exclusion: Perspectives from France and Japan pp.102-1152012

    • Author(s)
      INABA Nanako
    • Total Pages
      162
    • Publisher
      Trans Pacific Press

URL: 

Published: 2013-07-10  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi