2011 Fiscal Year Research-status Report
異文化対立の解決プロセスにおける内外コミュニケーション戦略の実際と課題及び可能性
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23530649
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 百代 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (20451734)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際メディア / コミュニケーション戦略 / 捕鯨問題 / 日本 / オーストラリア / ニュージーランド / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、国際的対立状況において当事国がコミュニケーションをどう展開させているか分析し、紛争解決プロセスの文脈で考えられるコミュニケーション戦略の課題や今後の可能性について、捕鯨問題を事例としながら検討することを目的とする。研究初年度である23年度は、まずメディア報道の現状把握を主課題とした。具体的には、捕鯨をめぐる立場の違いのある日本・オーストラリア・ニュージーランドの各国で、主要新聞報道が捕鯨問題の何をどのようにメッセージとして社会に提供しているのか、を内容分析の手法により調査した。同時に、IWC議事録等の関連資料の収集・整理も行った。これらは次年度以降の研究の基礎データとなる部分であり、研究全体の方向性を決める重要な意味を持つものである。もちろん当該年度の内容分析それ自体だけでも、対象3カ国の新聞報道それぞれが異なる情報のフレーミングを行って社会に提供していることが明らかになったことは、各国相容れない世論の形成のきっかけづくり、あるいは強化するものとして社会教育の役割を担っているのではないかという仮説につながっていく点で意義深いものである。また他方、IWCの議事録を入手できた事により、IWCという公式な会議上で各国が実際にどのようなやり取りを行っているのか、年々の議論を経てどのように主張が変化してきたのか(あるいはしないのか)、をある程度整理することができた。引き続き丁寧な分析は必要だが、この整理によって、今後メディア・フレーム分析をした際の解釈の妥当性を高めることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主課題は、研究全体の基礎となる3カ国のメディアの内容分析を行い、各国のメディアメッセージに埋め込まれているフレームのパタンを抽出することだった。時系列比較のため複数年のデータセットの処理および基礎分析はできたが、それぞれのフレームを確定するところまでは分析が進まなかった。また、次年度に向けて計画していた資料収集および整理は、予定の2/3程度までを終えた状況である。データ分析や資料収集作業の中でいくつかの問題が起こり、想定以上の時間がかかってしまったことが計画の遅れにつながったと考えられる。まず、日本とオーストラリアのデータについて、すでにある程度の分析は進んでいたものの、ニュージーランドを分析に加えることによって、分析のフレームワークおよび分析対象メディア自体の妥当性も再設定・再検討する必要が出てきた。加えて、海外研究協力者等との連携方法の大幅な調整が必要になり、研究代表者が体調不良で研究に専念できない時期もあったことにより、再分析による遅れを取り戻すことが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度以降の研究については、当初の計画・行程表を基本にしつつも、23年度で生じた遅れを取り戻す必要があるため、若干の修正を行う。まず24年度は、23年度中に予定しながら終えることのできなかった分析や資料収集・整理について引き続き進める。と同時に、予定として計画されていた各地の聞き取り調査(本調査)も開始させる。ただし、この時、調査対象を鯨関連産業に関わる人の範囲を広げる修正をするため、成果発表については同年度内に応募するものの、発表自体は翌年になる可能性もある。25年度は、聞き取り調査を続けながらもコンフリクト・マネジメント戦略の枠組みでの各データ分析を試みるのが主課題となる。前年度までの遅れは解消するよう努めるが、この年度も成果発表については次年度に繰り越される可能性がある。最終年度の26年度は、積み残しの課題をすべてクリアするとともにあらゆる機会を模索して成果発表活動を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に予定されている活動に関しては、以下の通り研究費を使用する。(1)前年度より積み残している部分に関わる経費は、前年度からの繰越分を使用する。ただし、ドキュメント分析用のソフトウエアについては、当初購入を予定していたものではなく、既に持っているソフトを主に利用するため、その分の予算は他の経費の不足分に充てる。(2)聞き取り調査については、日本、オーストラリア、ニュージーランドの各地で行うが、それぞれの調査地への交通費や調査補助への謝金等に約90万円を予算とする。ただし、調査対象の修正等によりそれ以上の金額が必要になった場合は(1)で述べた未使用経費で充てる。(3)メディア内容分析研究の部分に関しては、論文を国際ジャーナル投稿用に準備するため、英文校正や学会登録料等に約10万円を使用予定である。
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