2012 Fiscal Year Research-status Report
異文化対立の解決プロセスにおける内外コミュニケーション戦略の実際と課題及び可能性
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23530649
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 百代 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (20451734)
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Keywords | コミュニケーション戦略 / 国際メディア / 捕鯨問題 / 日本 / オーストラリア / ニュージーランド |
Research Abstract |
本研究は、国際的対立状況にある当事国がどのように国内外でコミュニケーションを展開させているのか、捕鯨問題をめぐる日本、オーストラリア、ニュージーランドの事例を取り上げ分析することから、紛争解決のためのコミュニケーション戦略を検討するものである。 研究2年目の24年度は、前年度に引き続き、コミュニケーション戦略の検討に必要な資料データの収集にあて、国際交渉コミュニケーションおよび国際メディア言説の内容把握・分析を実施した。まず交渉コミュニケーションについては、国際捕鯨委員会(IWC)の議事録(VR)を使い、会議内での対象国3国の発言内容とそのロジックの分析を進めた。分析結果は、なぜ交渉がまとまらないかを検討する上でのデータとなる部分であり、紛争解決戦略に直結する知見の一つといえる。 一方、国際メディア言説では、世論基盤となる社会的知識・言説を教育できる博物館に着目し、日本とオーストラリア・ニュージーランドにおける展示内容の相違を比較した他、情報ソース側の捕鯨に対する態度、広報活動への意識のあり方に焦点をあて、関係者に対し聞き取り調査を行った。研究計画当初は、マスメディア報道のみを調査対象としていたが、文献研究や聞き取り調査を通じ、教育的効果の高い施設であり外国からの観客にも情報提供する「メディア」として博物館の重要性を認識するに至り、分析対象に加えた。比較分析の結果を見ると、既に明らかにしたメディア報道のフレームと同調を予感させる相違パタンが確認できたため、今後さらに分析を深化させる必要はあるものの、知識の文化化とそれに呼応する情報のフレーミングという社会の仕組みの理解につなげる知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の課題には当初の計画には入れていなかった博物館の内容分析を追加したため、前年度から持ち越した資料整理等に加えて大幅な計画日程修正となった。したがって、情報の受け手への聞き取り調査を予定していたが、それについては調査内容の検討を含めて次年度に持ち越しとなってしまった。 また、大学内での業務量の変化もあり、成果物を作成する時間の十分な確保が難しく、当初予定していた段階まで完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度以降の研究については、当初の行程表を基本としつつも、24年度までの研究の方向性と進捗状況を鑑み、研究目標達成のためにいくつかの修正を行う。 まず25年度は、前半で持ち越しとなった調査の内容検討と実施、取りまとめを行い、後半にはコンフリクト・マネジメント戦略の枠組みを使いながらこれまでに集めた各データ分析を試みる。研究成果については、国際学会での発表を視野に入れるが、日程的に次年度に持ち越される可能性もある。 最終年度である26年度は、前年度から持ち越された課題がある場合は、まずそれをすべてクリアにする。その上で、研究成果の国際的学術ネットワーク上での発信活動にあてる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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