2014 Fiscal Year Research-status Report
異文化対立の解決プロセスにおける内外コミュニケーション戦略の実際と課題及び可能性
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23530649
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 百代 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (20451734)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 国際メディア / コミュニケーション戦略 / 捕鯨問題 / 日本 / オーストラリア / ニュージーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際的対立状況にある当事国が国内外でコミュニケーションをどう展開させているかを、捕鯨問題をめぐる日本、オーストラリア、ニュージーランドの事例を取り上げて分析し、紛争解決プロセス文脈で考えられるコミュニケーション戦略の課題や今後の可能性について検討するものである。 26年度は、日本の国内外コミュニケーション戦略の検討を行うため、コンフリクト・マネジメント戦略の文献研究をベースに、これまでに収集したデータを整理した。また当初の研究計画には入っていなかったが25年度に追加した国際司法裁判所の裁判資料や関連報道記事等の分析についても、データクリーニングを行った。 これまでのコンフリクト・マネジメント戦略の枠組みのもとでは、日本は効果的な戦略を取っているとは言えないことがデータから示唆された。特に日本国内のコミュニケーションが非常に内容的に乏しく、一定の言説がマスコミ等で繰り返されるのみという状況は、結果的に対外コミュニケーションにも負の影響をもたらす。しかしオーストラリアやニュージーランドも、世界世論を背景に自らの主張を繰り返し譲歩を匂わせることも全くないという、こちらもWin-Winを目指すコミュニケーション活動とは言い難い方法を取っている結果が得られた。実際にこうして生じた対立関係を解決するためのコミュニケーションとしてどういったアプローチが有効なのかは、更なる分析が必要になろう。 他方、国際交渉コミュニケーション事例としての国際司法裁判所での裁判は、日本の敗訴で決着がついたが、日本にとって戦略をどのように設計していたか、という視点でデータ分析を行った。しかしまだ結論を導き出すにはデータの精査が必要であるため、引き続きの課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
26年度は、最終年度としてこれまでに集めたデータ分析を行い、研究成果としてまとめる段階の予定であったが、データ整理の段階でいくつかのデータ等の再解析や理論的枠組み自体の再検討が必要であることが明らかになった。データ解析等のやり直し・追加作業に想定を超えた多くの時間を費やしてしまい、まったく論文作成が出来ないで終わってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データ解析を再確認しながら、また海外研究者との研究会等を通じてフィードバックを得ながら論文を完成させ、国際ジャーナルに投稿する。他に書籍化も視野に、マニュスクリプトを準備する。
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Causes of Carryover |
論文作成作業に遅れが生じることは分かっていたが、研究の質を確保することを優先し、必要なデータ解析の見直し・理論的枠組みの再検討を行ったため、年度中に論文の執筆、校正、編集作業を行うことが難しくなり、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に論文の完成・投稿および学会での発表等を行うこととし、未使用額を論文の校正・編集、およびジャーナル投稿のための経費として使用することとしている。
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