2011 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における家業経営の変容と展開に関する社会学的研究
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23530650
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
米村 千代 千葉大学, 文学部, 教授 (90262063)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 歴史社会学 / 家族社会学 / 「家」 / ファミリー・ビジネス |
Research Abstract |
23年度は、理論研究と、既に蓄積している文献資料のドキュメント分析に取り組んだ。加えて資料収集を行った。特に現在刊行されている家訓集に着目し、ファミリービジネスがかかえている今日的な課題や問題について考察した。また、ファミリービジネスに関する複数の専門領域の文献調査、資料収集、資料整理を集中的に実施した。 戦前の「家」を対象とした家業研究においては、家族と経営の問題は一つの枠組みでとられえられてきた。対して、現在は、家族論、経営論の二つの領域に分断されている。それぞれの知見をふまえ、両方を含みうるような概念や方法を検討するのが第一の課題であった。学説や理論を整理し、本研究課題のために精緻化する作業をおこなった。「家」研究と家族研究を架橋するための、方法論的、理論的検討をおこない論文にまとめた。 概念や理論に関する作業と並行して、初年度は、経営理念、家族規範に関する資料収集と分析をすすめた。家訓、家憲集から、個々の事業体や社会的に求められている理念や哲学を探った。家訓にあらわれる要素は、事業体の実態をそのまま反映したものとは言えないが、社会に求められる理想像を抽出するには適した資料であるし、家訓集の時代毎の変化を追うことも可能である。現代においては、具体的な経営の方法やノウハウよりも、より理念的、経営哲学的な要素が求められているという特徴をあげることができる。この背景には、現代社会において事業を継承するということが抱えている問題、たとえば、家族間の関係、親子関係をマネージすることに伴う困難といった課題があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「家」と家族概念に関する理論研究が予定通り進んだことと、家訓の現代的意味に関する研究を論文にまとめることが出来た点をあげることができる。戦前から戦後にかけての家業経営とファミリー・ビジネスの研究を架橋していくための準備が整った点から、おおむね順調に進んでいると評価した。 他方、事例研究については現在千葉を対象として研究を進めている。文献資料の収集はかなり進んだが、インタビューや地域性をふまえた考察をより進展させていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り研究を進めていく予定である。特に、当初の計画通り、理念レベルの分析を集中的に行う。戦前、戦後の家族や経営に関する思想研究に重点を置き、地域性や生業の違いをふまえ、大きな社会思想、政治思想、家族思想との連関を問うていくことが具体的な目的となる。そのため、思想関係の文献収集と、地域の事例研究を並行して進めていく。特に、地域としては引き続き千葉を一つのフィールドとする。 一地域と、全体社会の流れとの関連を射程に含みながら、分析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、資料収集や資料整理のための費用、調査旅費、学会報告旅費、資料整理のための謝金および印刷や現像にかかわる費用を計上している。
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Research Products
(4 results)