2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における家業経営の変容と展開に関する社会学的研究
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23530650
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
米村 千代 千葉大学, 文学部, 教授 (90262063)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 家業経営・家族経営 / 家族規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、家業経営のなかでも、特に小規模の農業経営に焦点をあてた研究を引き続き行った。特に、千葉における有機農業運動と家族形成、その継承についての分析を進めた。有機農業運動については、これまで運動や理念の側面を中心に議論が展開されてきた。自然農法や有機農業運動の中心にあるのはいうまでもなく理念であり、それを共有する生産者と消費者との連携が運動や活動を持続させてきた。他方、経営という面からみると、有機農業の担い手の多くは家族経営の農家であり、その産直運動の一方の担い手である消費者は、子育て世代の都市家族であった。本研究では、家業・家族のテーマとしてこの問題にアプローチすることにより、70年代以降今日まで続いている産直グループが、それぞれの家族ステージの変化によって農産物や消費量等の変化を経験していくプロセスを調査研究した。産直運動については、現代における家族経営の変容と同時に消費者との新しい連携の仕方が模索されており、この点は今後の研究の課題としたい。 戦後日本の家業経営の動向には、「家」や家族に関する規範意識の変化とともに、とりわけ農業経営については、少子高齢化、地方の人口減少問題が深く関わっている。以前「家と村」の問題としてとらえられて来た家業経営の問題が、現在、地域再生と家族形成の問題として問い直されているといえる。農業経営をはじめとする小規模のファミリービジネスの持続性には、「家」や家族の継承意識が依然として影響しており、それらは単に個々の家族だけの問題ではなく、共同性や地域の維持あるいは再生とも接合するテーマであることが再認識された。房総地域に関しては、首都圏に位置するという地域性が農業経営や家族形成に大きく影響している。今後はこの点を一つの焦点として家族史と地域史を接合させた研究へと展開していくことを予定している。
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Research Products
(3 results)