2011 Fiscal Year Research-status Report
「ナラティブ・アプローチ」を用いた「あしなが育英会」の支援活動に関する実践的研究
Project/Area Number |
23530651
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
水津 嘉克 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (40313283)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ナラティブ / セルフ・ヘルプグループ / 支援 / 死別 / 物語 |
Research Abstract |
本研究を進めていく上で、23年度の最大の課題として位置づけていたのが、手記集を書いた「自死遺児」とその関係者に対するインタビュー調査を試みることであった。紆余曲折があり当初なかなか実施にいたらない状況であったが、夏以降昨年度中にメールによるインタビュー調査を2回、対面によるインタビュー調査を2回、関連する場へのフィールドワークを1回行うことができた。そこで得られたデータは、まだ直接具体的な成果物にまでまとめ上げる得る段階にはないが、24年度以降の研究につながる重要な内容を含んだものであると考えている。 また、上記の調査が実施できたことにより、質的研究を最大の課題の一つである調査対象者を確保していくことの可能性が大幅に広がったことも、間接ではあるが今後の調査・研究への展望を大きくしてくれたと考えている。上記のデータなどを用いて、日本社会学会において1回、ミクロ社会学研究会において3回、計4回の発表を行うことができた。日本社会学会での発表では「現状の研究経過が他の研究者の関心を引かない」という意味での課題を痛感した。一方ミクロ社会学研究会での発表においては、主に理論的な側面での知見と現時点で得られているデータの意味を確認できたと考えている。 理論的な側面での知見とは、本研究の重要な概念である「回復の物語」と「共同体の物語」という概念の多義性を認識させられたことであり、24年度以降研究を進めていく上でこの概念の内実を一定程度(少なくとも本研究を実りあるするものにできる範囲で)確定していく必要があることを知ることができた。 また、調査を進めるなかで「現場への還元可能性」をどのように確保するのかに関しても、現場から「社会学的言語」を超えるかたちで率直に様々な疑問を投げかけられたことにより、認識を新たにすることができたと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展していると考える。理由として、当初一番の課題であった調査データを一定程度確保でき、そのデータを用いて研究の前身をある程度はかることができたことをあげることができる。またさらにデータを分厚くし、分析を進めていく展望を得ルことができたことは大きな成果であった。 また、今年度内だけに限定しても、獲得したデータによって理論的・実践的課題に関して、一定の新たな認識を得ることができ、その一部を学会や研究会で発表することにより、研究課題を一歩進めることができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず第一に現時点で得られているデータを用いて、理論的な課題を再検討することも含めて一定の成果を出すことである。そこには、当初の研究課題としては設定していなかった「語ること」のなかにある「語り得ないこと」に対するアプローチをどのように確保していくのかということも含まれる。 第二に昨年得た認識利得に加え、上記の研究課題を加味した上で、論文などとしてテクストとしての成果物を積極的に発表していく必要がある。 また、成果物を調査対象者・協力者である現場に持ち帰り、社会学的な議論の有効性を確認すること、それによってより一層の調査を進めていくことが24年度の課題である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまではインタビューデータのテープ起こしなどをすべて自分で行っていたが、データが増えてくると全てを自分で行うことが難しくなる可能性もあるため、テープ起こしの仕事をある程度外注していくことを考えたい(予定としては5万円程度)。また学会での積極的な発表を進めるための出張費・旅費も必要となると考える(予定としては8万円程度)。 さらには、同じような課題意識を持った研究者と積極的に研究会などを行っていくことが必要であると考えており、その為の費用も必要となると考えている。 それ以外に、文具/記録・分析のための物品が必要となってくる。
|