2013 Fiscal Year Annual Research Report
日英における医療・保健サービスの地域化に伴う地域集団の変容に関する地域比較研究
Project/Area Number |
23530652
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
清水 洋行 千葉大学, 文学部, 准教授 (50282786)
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Keywords | サード・セクター / NPO / 社会的企業 / イギリス / 地域社会 / 高齢者福祉 |
Research Abstract |
2013年度は、主に英日における現地調査と研究成果の発表を行った。ロンドンでの現地調査では①サード・セクター組織の変容要因として、サービスの評価機関の実態把握、②全国的な中間支援組織が示す戦略とフロントライン組織の実態との対比のほか、③研究期間全体の整理・考察にむけて現地の研究者らとのミーティング等を行った。日本では仙台市、静岡市、佐賀市ほかにて、高齢者福祉NPOを対象に、地域包括ケアシステムの構築過程において求められる市町村や医療機関ほかとの連携、組織財政の縮小への対応等を把握した。英日での現地調査は連携研究者である中島智人氏(産業能率大学)と実施した。研究成果について地域社会学会、日本地方自治学会、日本NPO学会等で発表した。 研究期間全体における英国での現地調査を通じて、医療改革と連動して進行しているパーソナライゼーション(サービスに関する個人の選択や評価の重視)、コミッショニング(行政からの委託・補助)における対象サービスのパッケージ化や成果(outcome)ベースによる評価等が進む一方で、サード・セクター組織が参加しうる地域の意思決定過程の水準の低下や変質が進み、それらのもとでの地域のサード・セクターにおけるコンソーシアム化・社会企業化・ボランティア化等の多岐的な対応を把握した。ロンドンの都心区と郊外区における地域社会調査によるこの実態把握は、英国の先行研究で個々に扱われてきた諸事象・諸論点について、それらを相互に関連づけて考察する点に特徴があり、日本でのサード・セクターへの社会学的アプローチの展開に寄与しうる作業と考える。また日英両国において新自由主義下で困難に直面している中規模サード・セクター組織について、多様なニーズに対応する生活支援サービスの提供および創出機能に着目し、その存続条件として地域の意思決定への参加スキームや中間支援組織のあり方について考察した。
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