2011 Fiscal Year Research-status Report
日本的雇用慣行の変動期における職業紹介ビジネスの社会学的研究
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23530655
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 慎一 横浜国立大学, 経営学部, 准教授 (30334618)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 日本的雇用慣行 / 労働市場 / 転職 / 職業紹介 |
Research Abstract |
平成23年度の当初の計画では、1)職業紹介・再就職支援サービスの法改正とその背景、を中心に調査をおこない、2)職業紹介・再就職支援サービス業の業務内容と変遷、3)職業紹介・再就職支援サービス業の技能形成、についても文献サーベイや資料収集を同時併行的に進める予定であった。しかし当該年度中は3月を除き在外研究中であったため、当初の計画どおりに研究を進めることができなかった。 実績としては、企業を越えた業務情報の共有例として日本の小集団活動を全国的に推進する団体の変化について論文にまとめたことや、1990年代以降の日本における転職に関する社会学的研究の動向を把握したことにとどめられる。 1990年代以降の日本における転職に関する社会学的研究には、(1)転職ルートに関する研究と、(2)社会移動としての転職に関する研究、の2つの流れがある。(1)では公共職業安定機関や民間職業紹介機関、広告を媒介にした転職以外に、個人的なつてに頼った転職のメカニズムに注目が集まった。アメリカの社会学者グラノヴェターによる「弱い紐帯の強み」仮説を日本で検証する研究や、個人的なつてに頼った転職によるその後の能力発揮への影響に関する研究が蓄積されている。 (2)では景気後退期における転職率の変化の検証が大きな論点とされてきた。しかし、しばしば非正規雇用から非正規雇用への「転職」や正規雇用と非正規雇用間の「転職」を含めて分析がおこなわれており、申請者が関心を寄せる正規雇用から正規雇用への「転職」の実態について明らかにした研究は少ないものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年度は在外研究先でほかのテーマで研究をしていたこともあり、計画どおりに申請した研究をすることができなかった。また、日本の職業紹介事業に関する研究テーマを掲げていることもあって、ウェブで入手可能な情報を除き、海外で日本の文献・資料を収集することが困難だった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度に実施できなかった部分を含めて、研究を実施する。平成24年度から平成26年度までの研究項目は、(1) 職業紹介・再就職支援サービスの法改正とその背景、(2) 職業紹介・再就職支援サービス業の業務内容と変遷、(3) 職業紹介・再就職支援サービス業の技能形成、(4) 職業紹介・再就職支援サービス利用者、の4点に分けられる。 それぞれの項目について、先行研究のサーベイや公刊資料、政府・団体による統計、ウェブサイト上の政策・企業に関する情報を収集する。また過去や現在における政府や企業の関係者への聞き取り調査や内部資料の収集もおこなう。(3)については、企業の中核的な競争力の源泉ということもあり、調査に相当な困難が伴うことが予想される。(4)は利用者へのアクセスが困難であるものの、聞き取り調査や質問票調査ができるよう工夫する。 とくに平成24年度は、平成23年度の計画に含まれていながらも実施できなかった事項を含めて研究を推進する。(1)と(2)について先行研究のサーベイや公刊資料、ウェブサイト上の情報収集や、政府・団体による統計の整理・分析を含めて、研究を進める予定である。先行研究のサーベイについては、平成23年度中に実施してきた作業の分も含めて、論文のかたちでまとめる計画である。公刊資料等は近年のものだけでなく、戦後の資料、できれば戦前のものも含めて幅広く収集することを想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、(1) 職業紹介・再就職支援サービスの法改正とその背景、(2) 職業紹介・再就職支援サービス業の業務内容と変遷、について調査するために研究費が使用される。それぞれの項目について、先行研究のサーベイや公刊資料、政府・団体による統計、ウェブサイト上の政策・企業に関する情報を収集する。また過去や現在における政府や企業の関係者への聞き取り調査や内部資料の収集もおこなう。したがって、関係する文献や資料の購入費やコピー費、資料を所蔵している機関までの交通費として、おもに研究費が使用される。 なお、日本的雇用慣行や法的規制との関係で職業紹介事業のあり方が規定・変化することを踏まえ、それらに関係する研究や資料の収集も想定される。そのための費用としても、研究費が使用される見込みである。 また、学会大会で中間的な成果を発表するため、その交通費や大会参加費としても研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)