2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストリート文化の「非犯罪化」に関する表現の自由と所有権の相克問題
Project/Area Number |
23530657
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小倉 利丸 富山大学, 経済学部, 教授 (60135001)
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Keywords | ストリート・カルチャー / グラフィティ / 文化犯罪学 / 所有権 / 表現の自由 / バンクシー |
Research Abstract |
ストリートカルチャーのなかでも主として「グラフィティ」と呼ばれる表現が、これまでも「バンダリズム」と呼ばれて、取り締まりの対象になってきた。これに対して、従来の研究では、芸術あるいはカルチュラルスタディーズの観点から、アートにおける表現の自由の問題としてアプローチする方法と、社会学と犯罪学の学際的なアプローチ、とりわけ文化犯罪学による研究方法がみられた。 今年度は、研究の最終年度として、これまでのアプローチを踏まえて、以下の二つの具体的な事例を取り上げながら、主として、所有権と表現の自由に関する法と芸術・文化の協会領域が抱える問題を検討し、研究の総括とした。 (1)従来の芸術・文化研究の分野で議論されてきた「表現の自由」の問題を、主として、富山県立近代美術館における「遠近を抱えて」の作品非公開処分を事例として検討した。これはストリート・カルチャーではなくファインアートの世界での問題であるが、この問題を取り上げることでストリート・カルチャー固有の「犯罪」あるいは「違法性」をめぐる特徴を明確にすることが可能となった。 (2)ストリート・カルチャー、特に世界的にも著名な英国、ブリストルのグラフィティ・アーティスト、バンクシーを具体的な事例として取り上げ、その「違法性」をめぐる議論が、バンダリズムの文脈だけでなく「アートとしての洗練され方」とか「観光資源」といった別の文脈からの評価軸が与えられることに内包されているイデオロギー作用を検討した。 これらを通じて、所有権と表現の自由の相互関係が、前者を優位に置く「システム」として構造化される文化構造を特殊近代的な都市の管理と市場経済による空間の私有との関わりで明らかにした。この研究から所有権に制約されない都市空間への自由なアクセスを所有権論を超克する民衆的公共性として理論化する端緒を得ることができた。
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Research Products
(2 results)