2011 Fiscal Year Research-status Report
ライフステージに基づく父親・母親のワーク・ライフ・バランスと家族成員の発達・適応
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23530661
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
尾形 和男 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10169170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂西 友秀 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30165063)
福田 佳織 東洋学園大学, 人文学部, 准教授 (10433682)
森下 葉子 文京学院大学, 人間学部, 助教 (90591842)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス |
Research Abstract |
父親と母親のワーク・ライフ・バランスが夫婦関係と家族成員の精神的健康に及ぼす影響についてライフステージごとの相違について検討を加えている。今年度は、愛知県、埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都の妊産婦、乳幼児、小学生(3,4年生)、中学2年生を持つ家庭への調査を実施した。 現在、データー入力を終了した乳幼児期の家庭350世帯のデーター分析を行った。共働き家庭について、父親と母親を含めて、クラスター分析によりワーク・ライフ・バランスの型を検討した結果、(1)家庭との交流低・仕事への関わり中程度・自己の時間の活用低・地域交流高、(2)家庭との交流高・仕事への関わり高・自己の時間の活用高・地域交流高、(3)家庭との交流高・仕事への関わり低・自己の時間の活用中程度・地域交流低の3つの型が抽出された。この3つの型を基に夫婦関係・母親・父親・子どもの精神的安定度との関連性を一元配置分散分析により検討した。その結果、(1)の型のワーク・ライフ・バランスによる生活をしている家庭は(2)、(3)の型のワーク・ライフ・バランスにより生活している家庭よりも夫婦の間の安定感、子どもの精神的安定、夫婦のコミュニケーションなどに問題が生じることが確認された。また、母親と父親それぞれにワーク・ライフ・バランスとの関係について検討したところ、父親でも同様の傾向が見られた。母親については父親ほどの関係は見られなかったが、(2)の型のワーク・ライフ・バランスの場合には(1)の場合よりも子どもの精神的安定感が高いことが示された。 以上のように、乳幼児期の共働き家庭では、父親・母親が家族との交流、仕事への関わり、自己の時間の活用、地域との交流などバランスの取れた質的に高い生活を送ることが夫婦関係を初めとして家族成員の発達・適応を促進することが示され、現代社会におけるワーク・ライフ・バランスの重要性と位置づけが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
父親と母親のワーク・ライフ・バランスと家族成員の発達・適応についてライフステージに基づいて体系的に把握することを目的としているが、平成23年度は調査対象として、妊産婦、乳幼児、小学校3,4年生の家庭に加えて中学2年生の家庭の調査も実施した。調査地域は愛知、埼玉、千葉、神奈川、東京などであり各段階500程度のサンプルを収集することを目標とした。 現在各ライフステージの妊産婦102世帯、乳幼児350世帯、児童400世帯、中学校400世帯の回収が終了し、愛知県のデーターが多くなっているものの妊産婦の家庭のデーターを除いて分析に耐えられる数となっている。妊産婦については、郵送による提出のため回収率が低く現在のところ30%程度の回収率であるが、調査を継続すると同時に関東地域への依頼を打診し調査対象を拡大している。 データーの入力については、アンケートの項目とアンケートの数が多いので埼玉大学と愛知教育大学の2カ所で行っており、小学校と中学校のデーターも入力が7割ほど完了している。また、データー分析は愛知教育大学で実施している。 研究目的達成に向けての第1段階として乳幼児の共働き家庭の父親・母親のワーク・ライフ・バランスの状況と家族成員の精神的健康、夫婦関係の分析からその状況を明らかにしつつある。仕事と家庭、自己の時間、地域への関わりなどバランスの取れた高い関わりを持つ父親・母親の家庭ほど家族成員の精神的健康、夫婦関係に良い影響をもたらすことが示された。これから更に小学生と中学生の家庭の分析を行い、ライフステージごとの特徴を明らかにし、更に各ステージの比較も行っていく。これらの分析結果は平成24年度の日本応用心理学会、日本教育心理学会、日本発達心理学会で順にライフステージごとに紹介する予定である。そのために、研究分担者の学会入会と原稿作成などを含めた発表の手続きと準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は予定していた福島県での調査を東日本大震災のために現状を配慮した上で控えたこと、また東京都と埼玉県地区を担当していた研究分担者の場合、乳幼児、小学校児童の関連諸機関への初めての調査依頼校の多くが電話による問い合わせの段階で学校の実情により断わられるケースが相次ぎ出現し、予定されていた調査が実施できないことも多々あり、そのために調査協力校への訪問と事前の打ち合わせのための出張、アンケート用紙の配布、実施、返送、協力への御礼などに予定された見積もりよりも経費が使用されなかった経緯がある。その反面、都内の幼稚園では、研究分担者との従来の関係から電話での対応のみで事前の打ち合わせへの出張や事後の挨拶なしで調査が進み、返送費以外経費が使用されなかった場合もある。このように、調査受け入れ校の受け入れ態勢に差はあるが、概して予想以上に厳しいことが多く、調査進行とそれに伴う経費の面に影響を受けた。 今年度は、基本的に研究分担者の係わる各大学、研究分担者の関係する協力機関での調査用紙配布と回収を原則として進め、調査の実施をできる限り確保して行く方針である。そして、前年度分の予算と合わせて限られた貴重な予算を効率的に使用し、愛知県を始めとして特に東京、埼玉、千葉、神奈川の関東地区を中心として高校生2年生と大学生(2,3年生)それぞれ500世帯の調査の実施とデーターの回収率を高めて行く予定である(乳幼児、小学生、中学生の家庭への調査も補足的に継続して行く)。また、子ども個々の状況や学校の状況を配慮して郵送法による回収を希望する教育機関もあるために、実情に合わせた柔軟な対応をして行く。 以上のような方針に基づき、研究分担者はそれぞれの地域で関係協力機関への打診、訪問、説明と依頼、調査の実施、回収などできるだけ丁寧に実施し回収率を上昇させるために効率的に調査を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、平成23年度の研究の継続として実施するが、平成23年度の未完了な妊産婦家庭の調査を継続して行なう(小学生(3,4年生)と中学2年生の家庭それぞれ約100世帯の確保も含めて東京、埼玉で継続して調査を行う)。また高校2年生と大学生(2,3年生)のそれぞれ家族500世帯の確保を目標とした新たな調査を加え、それに基づくデーターの入力と分析が中心になる。調査の実施ににあたっては、関係協力機関で調査用紙の配布、まとめて回収することを原則として進め、回収率の向上を念頭に置き研究費の効率的な使用を進める。 このような方針を実施するために調査に必要な準備として平成23年度と同様に次に示すような用意をする予定である。 調査協力機関先の訪問と打ち合わせ、調査用の用紙、返信用の封筒(妊産婦については郵送法による依頼を継続実施する)を準備すると同時に愛知教育大学でアンケート用紙の作成を行い、研究分担者の協力に基づき、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県など協力関係機関への郵送を行う。また、調査協力校への依頼に際して個別の郵送による返送を希望する場合にはそれに対処するために、返信用の封筒も同封する予定である。一方で各研究分担者の地域の実情に応じて、分担者が個々に調査用紙を用意し、依頼、実施、回収を行うことも昨年度と同様に実施する。 以上のように、調査協力機関先への訪問に要する交通費、調査用紙の準備と作成、送付、返送に要する経費(一括して調査用紙をまとめる場合と、個々の調査対象者による郵送)、データー入力、調査協力者への御礼などに要する経費を予定している。また、計画を実施するために平成24年7月と平成25年2月に行う研究分担者によるミーティングに要する交通費も予定している。さらに、平成23年度の分析結果を協力機関へ報告のために訪問に要する交通費も予定している。
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