2012 Fiscal Year Research-status Report
ライフステージに基づく父親・母親のワーク・ライフ・バランスと家族成員の発達・適応
Project/Area Number |
23530661
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
尾形 和男 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10169170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂西 友秀 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30165063)
福田 佳織 東洋学園大学, 人文学部, 准教授 (10433682)
森下 葉子 文京学院大学, 人間学部, 助教 (90591842)
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス |
Research Abstract |
本研究は、妊婦、幼児、児童、中学生、高校生、大学生の各ライフステージごとに、また、共働き家庭、専業主婦家庭などの家族形態別に父親、母親、夫婦のワーク・ライフ・バランスが家族成員のストレスをはじめとして、夫婦関係、家族機能などに及ぼす影響について体系的に分析することを目的としている。 平成24年度においてデータの回収途中ではあるが、回収し終わった段階での分析を加えて、妊婦、幼児、児童の家庭の状況について研究分担者連名で学会発表を行い、研究成果の公表を行った。 具体的成果としては、妊婦家庭について、初産婦家庭の専業主婦家庭において夫が仕事か家庭に関与している場合夫は夫婦相互の理解が得られていると認知していること、経産婦家庭においては夫が仕事、家庭ともに関与が低い場合に妻のストレスが高いことが示された。また、共働き家庭では主として夫の家庭関与が高い場合に妻の見る「相互の信頼」「相互のコミュニケーション」が高かった。幼児の家庭においては夫の家庭関与が高い場合、夫婦関係と家族機能に積極的な影響をもたらすこと、妻のワーク・ライフ・バランスについては「仕事中心型」は夫の見る夫婦関係、子どものストレスに負の影響をもたらし、「バランス型」「家庭と仕事中心型」は夫の見る夫婦関係に正の影響をもたらすことが確認された。さらに、児童の家庭に関しては、夫婦の「仕事関与」「家庭関与」「地域交流」「自己の時間の活用」がバランス良く高い場合夫婦関係が良好であり、子どものストレスも低いことが示された。また、専業主婦家庭では夫が上記の各要素を高いレベルでバランス良くこなしている場合に、夫婦関係が良好であり、妻のストレスにも正の影響をもたらすことが示された。 以上のように、妊婦、幼児、児童の各家庭についての家族形態別に、妻、夫、夫婦のワーク・ライフ・バランスの影響について体系的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、妊婦から大学生に至るまでの各ライフステージごとのデータを継続して収集しており、現在妊婦家庭202、幼児431、小学生398、中学生623、高校生307、大学生120世帯のデータを確保している。平成24年度は学会発表に合わせてその段階で収集されているデータをもとに分析を加えている。 本研究の目的は、父親、母親と夫婦のワーク・ライフ・バランスが家族成員にどのような影響をもたらすのかということについて家族形態別に検討することにある。その際、父親と母親のそれぞれのワーク・ライフ・バランスの影響、夫婦によるワーク・ライフ・バランスの影響について検討を加えている。特に夫婦については、夫婦が同じようにバランスのとれたワーク・ライフ・バランスを送っている場合には良好な影響をもたらし、そうでない場合には好ましくない影響をもたらすであろうと予測した。その結果、1.夫が仕事中心の生活を送る場合には、妻のストレスが見られると同時に、夫婦関係に好ましくない影響をもたらす。2.妊婦の家庭では、夫の仕事中心の生活は産婦にストレスをもたらし、一方で、夫は良好な夫婦関係ができていると感じている。3.妻が家庭よりも仕事中心の生活をする場合には夫婦関係に好ましくない影響をもたらすと同時に幼児においては特に子どものストレスにも影響をもたらす。4.共働き家庭の場合、夫婦ともに家庭と仕事に相対的に高くかかわっているバランスのとれた家庭において夫婦関係が良好であり、夫婦ともにストレスが低く、子どものストレスも見られない。 以上のように予測した内容に近い結果が得られている。現段階においては概ね予定されている内容の分析が実施されていると考える。しかし、妊婦家庭、大学生の家庭のデータが予定よりも少ないため現在データの収集を継続しており、より多くのデータが集まった段階で、更に分析を詳細に進める予定である
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Strategy for Future Research Activity |
今後に向けて、2つの点に重点を置きたいと考えている。 1.ライフステージに基づいて、妊婦、幼児、児童、中学生、高校生、大学生の各家庭 の調査を実施しているが、予定としては各ステージ500程度のデータを予定してい た。しかし、現在妊婦の家庭では202世帯、大学生の家庭120世帯程度の収集に終わっ ており、この2つのステージのデータを増やす予定である。 2.1の作業に基づいて、収集されたデータを基にさらに詳細な分析を行い、研究の目 的をより具体的に検討する。その際、各ステージの父親と母親、あるいは夫婦のワー ク・ライフ・バランスについて比較を行い、各ステージの特徴もより明らかにしてい きたいと考えいている。これらの分析作業を通して、各ステージごとの父親 、母親の ワーク・ライフ・バランスの状況比較、そして共働き家庭の夫婦のワーク・ライフ・ バランスの特徴と相違を明らかにする。このような分析から、ワーク・ライフ・バラ ンスの状況について家族の発達的な段階に基づく変化も検討を加える。 目的2を具体的に進めるために、今年度は中学生、高校生、大学生の家庭の状況についての分析を加える。 上記のことを進めるために、研究分担者による地域ごとのデータ収集をより強く進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究分担者の森下葉子氏の出産に伴う育児休暇取得があり、予定していた平成24年度のデ-タ収集が実施されておらず、それに係わる諸費用が殆ど使用されていない。また、大学生家庭のデ-タが予定していたよりも少なく、その収集や分析に係わる費用が減少したために残額が生じた。 次年度は3年計画の最終段階であり、各ステージのデータ数の不足するところについてはできるだけ、補足的にデータを収集したいと考えている。特に、森下葉子氏の担当する領域を補足すると同時に、妊婦家庭と大学生の家庭を対象としたアンケート用紙の作成、回収後のデータ入力に要する費用として、また、分析の方針についての話し合いや学会発表のための事前の打ち合わせ、また、今後研究成果を学会誌などに投稿する予定であるので、そのための打ち合わせの会合に要する交通費などに充当する予定である。
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Research Products
(9 results)