2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530662
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
足立 重和 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80293736)
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Keywords | 社会関係資本 / 観光 / 祭り / 民俗芸能 / 頼母子講 |
Research Abstract |
平成25年度は、社会関係資本と住民主体の観光現象との関係の究明のために、(1)郡上八幡だけでなく他地域との比較研究と、(2)そのような対象への理論的アプローチの確立、という2つの課題に取り組んできた。 まず、(1)に対応するために、各地の代表的な祭りや民俗芸能(具体的には、滋賀県長浜市の「曳山祭り」、徳島県徳島市の「阿波踊り」)を巡検するとともに、それらの祭りや民俗芸能のあり方を左右する社会関係資本と、郡上おどりの背後に控える社会関係資本(頼母子講)との比較研究を行った。とくに、長浜祭りをささえる社会関係資本が伝統的なコミュニティ(町組)である一方、阿波踊りをささえる社会関係資本が自発的な結社(連)であり、それらが曳山や踊りを通じて互いに競い合うことで、祭りや踊りをささえると同時に、社会関係資本である町組や連をより強固なものにしていた。また、阿波踊りの場合、それぞれの連が強固な結びつきを示しているがゆえに、踊りの場において観光客がつくる“にわか連”を受け入れる素地ができていた。以上の2地点と郡上八幡を比較すると、郡上八幡の場合、社会関係資本が頼母子講という狭い関係性であるため、住民の手から離れた観光開発に一定の歯止めがかかるものと思われる。 次に、(2)に対応するために、社会学・人類学・民俗学分野での理論的・方法論的研究の進展をはかった。そこで注目したのは、地元住民の語りである。これまでの研究では語りをたんなる事実伝達の媒体とみる傾向があったが、本研究ではその豊饒さに注目することで、どのような可能性が開かれるのかを明らかにした。ここでいう語りの豊饒さとは、語ることそのものがひとつのふるまいとなっており、語られた内容の事実検証を無効にさせる水準にあるものである。この水準にある“事実”の究明は、日本民俗学の心意論と共鳴しながらも、現代民俗学的な技法の構築に貢献するであろう。
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