2013 Fiscal Year Annual Research Report
シンガポールにおける「国民」文化の生成に関する社会学的研究
Project/Area Number |
23530663
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
鍋倉 聰 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (50346011)
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Keywords | 社会学 / シンガポール / アジア社会 / 国民文化 / 国民国家 / ナショナリティ / エスニシティ / 多人種社会 |
Research Abstract |
シンガポールは、1965年の独立から50年に満たない上、英国の分割統治以来現在に至るまで、華人・マレー人・インド人・その他という四人種別に分断された多人種社会を構成しているという、国民文化の生成が困難な条件をそろえている。 このシンガポールにおいて、国民文化は果たして生成し得るのか。本研究では、国民国家、ナショナリティ、エスニシティに関する社会学研究の発展に寄与することを目的に、その生成をめぐる様々なせめぎ合いを、取り壊しによる解体の側面についても視野に入れ、現地資料をもとに明らかにすることによって研究を進めた。 シンガポール研究において、国家側からのアプローチが中心を占める中、本研究では、国民側からのアプローチも試みるため、次の五点を取り上げて研究を進めた。(1)総団地化社会の成立と団地文化の生成を通して。(2)ホーカー(屋台)センターという独自の飲食空間の生成とその取り壊しについて。(3)国民的モニュメントの生成と取り壊しをめぐって。(4)シンガポール独自の言語をめぐって。(5)シンガポール華人と中国人の関係について。 本研究では、1945年から1970年代までの生成及び定着過程を中心とする文書資料の収集と、解体を含めた現況に関する現地調査を中心に研究を行った。今年度は資料収集のほか、これまでに収集した資料のまとめと分析を中心に研究を行った。 収集した資料から、シンガポールの国民文化の生成にあたっては、(1)団地と(2)ホーカーセンターがとくに重要であり、またシンガポール共和国が成立する1965年以前の過程も含めて、政府と人々との間の相互作用が重要であることが明らかになった。 この相互作用の過程の全貌を明らかにすべく資料のまとめを行っているが、まとめるのに時間がかかり、当初予定していた最終年度中での研究成果の公表には至らなかった。公表を早く行うとともに、次の科研費研究の基礎資料として活用していく。
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