2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530679
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
恩田 守雄 流通経済大学, 社会学部, 教授 (00254897)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 互助ネットワーク |
Research Abstract |
当該年度の研究は韓国の互助慣行について調べ、日本との相違点と類似点を明らかにすることであった。韓国の互助関連の文献を精読するとともに、現地調査(2011年9月、2012年3月)を行い、半島内部の農村や島嶼地域について主に全羅南道で聞き取りを行った。その結果、日本同様互助慣行が近代化(生産および生活様式の変化)により衰退していることが明らかになったが、その一方で門中では同じ一族の者を救済するために共有地(コモンズ)を貸す制度が現在も存続することを知った。また島嶼地域では、共有地としての属島を小学校に付与して自由に海産物を採らせその販売代金で学童費用に充当する、あるいは共同所有する村落がその島の海産物を採取して学校が必要とする費用を捻出するという「モヤイ島」の存在を地域住民への聞き取り調査で明らかにした。この研究成果は2012年度10月発行の大学紀要にて発表する予定である。 日本との比較関連で、東日本大震災後の地域社会における互助ネットワークの変容が本研究にとっても重要と考え、コミュニティ意識について被災者や東北3県の被災地で聞き取り調査を行った。その結果互助ネットワークの変容について「地域内の互助関係が希薄であると、逆に外向きの互助関係が意識される(外部志向の絆の深化)」、「地域外からの支援が強まるとその依存度が高くなり、その分地域内の互助ネットワークに目が向かわず、またそれが弱くなることで、ときには地域社会の亀裂がもたらされる(絆の内部亀裂と外部志向)」、原発避難者では「切断された地域社会における互助ネットワークの関係が絆の内部分裂として表れ、新たな地域社会につながりの可能性を求めるようになる(絆の内部分断と外部新形成)」という経験則が得られた。伝統的な互助慣行が強いところでも震災によりつながりや絆が弱体化している。この研究成果は2012年3月発行の大学紀要にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査それ自体は当該年度に実施できるが、まとまった調査が年度の夏季休業と翌年の春季休業の期間に限られるため、当該年度の研究成果の公表(論文の掲載や学会の発表)が半年遅れるのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の韓国での互助慣行の調査を終え、24年度は同じ東アジアの中国での現地調査を計画し(2012年9月、2013年3月の2回)、中国の互助行為と日本のそれ(ユイ―互酬的行為、モヤイ―再分配的行為、テツダイ―支援<援助>的行為)との比較に重点を置いた研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国での現地調査費用(通訳などの人件費・謝金含む)と国際学会で報告するための旅費が大きな出費として予定されている。
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Research Products
(1 results)