2011 Fiscal Year Research-status Report
個人化社会における社会的包摂の研究―ドイツの市民労働を事例として
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23530681
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 美登里 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (10406845)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 社会的包摂 / 市民労働 / ウルリヒ・ベック / 市民活動 / 個人化 |
Research Abstract |
ドイツ民主共和国ミュンヘン市において実施されている市民労働について、発案者の社会学者ウルリヒ・ベック氏に市民労働というアイデアの変遷過程について、また、その変容についての氏の考えをインタビューした。ベックが発案した、市民労働のアイデアは、一部は2012年からドイツ全土で実施されている期間限定「市民労働」プロジェクトに受け継がれたが、「自発性」という重要な要素がなくなってしまった。他方、「自発的」な民主主義的活動としての側面は、ミュンヘン市が取り組んでいる市民活動プロジェクトに引き継がれていることが分かった。現在の市民労働の実態については、ミュンヘン市の当該部署担当者およびジョブ・センター担当職員にインタビューすることで明らかとなった。市民労働は、いくつかの問題をかかえてはいるが、長期失業者に対する雇用対策として機能し始めていた。他方、市民活動については、ミュンヘン市・民間非営利団体・企業の三者の協同により、活発に行なわれていた。市民活動に関しては、市民活動の研究を行なっている社会学者ゲルト・ムッツ氏に専門知識の提供をうけた。さらに、ミュンヘン市の市民活動担当者、市民活動に従事する非営利団体、非営利団体を統括する団体の代表に実態をインタビューした。市民活動においても、職業能力の涵養は行なわれていた。ミュンヘン市では、既存の標準的ライフコースからはずれてしまった者に対して、さまざまな形での包摂の試みがなされていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、3年間でおこなう基盤研究の1年目であり、市民労働の概要(市民労働がドイツ民主共和国において現在どのように機能しているのか、ベックが発案したものからどのような経緯でどのように変化したのかということ)を知ることができたので、当初の目標はおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は8月に1ヶ月間の調査を予定していたが、その時期は、調査にあたって協力してくれるドイツ人研究者が調査研究で海外にいって不在であったこと、インタビュー対象者も長期休暇中で不在の可能性が高いことから、8月以外の時期にドイツで調査する形に変更した。授業期間であったため、8月の代わりに実施した10月の調査は約2週間になった。そのため残額が生じてしまった。次年度は3月末、5月上旬、10月上旬にそれぞれ2週間弱調査を実施する。調査は、ベックの市民労働のアイデアがそれぞれ部分的に実現されている、市民労働と市民活動という二つの活動について社会的包摂という観点から行なう。具体的には、市民労働と市民活動の参加経験者に、その活動の意義やその活動がその者の人生に与えた影響などについて聞き取り調査を行なう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、ミュンヘン市で実施予定のインタビュー調査に使用する。また、研究成果の発表を国内で行なう予定である。したがって、研究費は、旅費が大半を占める。インタビューのトランスクリプション代も必要である。また、市民労働関連図書も購入する予定である。
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