2011 Fiscal Year Research-status Report
生活保障組織としての家族・親族・近隣に関する比較研究:バリ島と日本の事例
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23530685
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
永野 由紀子 専修大学, 人間科学部, 教授 (30237549)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インドネシア / バリ島 / スバック / ツーリズム / 村落 / 家族 / 山形県 / 庄内地方 |
Research Abstract |
本年度は、研究の初年度として、研究テーマに関わる統計資料や文献の収集を行うと同時に、インドネシア・バリ島の農村と日本の農山漁村で予備調査を実施した。その結果、以下のことが明らかにされた。◇インドネシア・バリ島について(1)バリ島は、日本の農村と同様に、集約的な水田稲作が行われており、よく管理された肥沃な棚田や水田が広がるアジアのなかでは人口密度の高い地域である。(2) バリ島において、人間と自然が調和し、環境を保全するうえで大きな役割を果たしてきたのは、「スバック」と呼ばれる灌漑組織(=水利組合)である。(3)「緑の革命」による高収量品種の導入とツーリズムの進展は、バリ島の農業を大きく変貌させ、土壌の荒廃と農業の担い手の減少をもたらした。(4)バリ島にある9つの地区の中で、タバナン県は、「バリの米倉」といわれる稲作農業の盛んな地域である。(5)タバナン県ジャティルイ村は、よく管理され、生物の多様性が保持された肥沃な棚田が広がる地域である。(6)本年度は、ジャティルイ村での予備調査をとおして、ジャティルイの景観が保たれてきた諸要因や諸条件について考察した。◇日本の農村について(1)日本の村落についての先行研究を収集し、「村落共同体」論および「自然村」論、「生活組織」論を中心に整理・検討した。(2)統計資料の分析をとおして、今日の日本の農家や農村の現状を分析し、農家戸数と農家人口の減少、高齢化の傾向について考察した。(3)東北地方の農山漁村と島嶼部を中心にいくつかの集落を視察し、平野部と山村、島嶼部で大きく異なり、集落ごとに多様であるが、農村人口の高齢化と農業の担い手の減少・高齢化の傾向は共通することを明らかにした。(4)本年度は、山形県庄内地方H地区での予備調査をとおして、「自然村」と呼ばれる藩政村の範域の共同性の今日的特質について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に関する文献研究や資料収集・資料の整理と分析については、研究計画どおりに進展している。また、現地調査についても、インドネシア・バリ島および日本の農村のいずれについても予備調査を予定通り遂行した。本年度は、文献資料の分析及び予備調査の結果をふまえて、来年度以降に本調査を実施するための対象地の候補を析出することができため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的に関する文献・資料の収集と分析を継続するとともに、インドネシア・バリ島および日本の農村について前年度に析出した本調査の対象地において現地調査を実施し、特定村落についてのインテンシブな事例研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する主な研究経費は、海外(インドネシア)と国内の農山漁村および島嶼部の現地調査に関する諸経費である。なかでも最も経費を要するのは、外国旅費であり、通訳や調査協力に支払う謝金も必要である。また、文献や資料の収集・分析を継続するための物品費も必要である。
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