2011 Fiscal Year Research-status Report
地域社会を基盤とする子ども虐待防止:行政の政策と民間の活動
Project/Area Number |
23530702
|
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
井上 眞理子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (50137171)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 児童虐待防止政策 / 母子保健事業 / ペアレンティング教育 / 民間団体 / 政策評価 / 要保護児童対策地域協議会 |
Research Abstract |
申請者は、平成16~17年度科学研究費補助金(基盤研究(C))の交付を受けて、全国の都道府県に対し「児童虐待への政策的対応についての調査」を実施した(平成17年11月~12月)。平成23年度の研究においては、I、前回の平成17年度調査に回答を寄せた府県に対する追跡調査、およびII、平成17年度調査に回答が無かった都道県への再調査、を実施した(平成24年1月~2月)。I、追跡調査の対象となったのは、前回の調査に回答を寄せた宮城、秋田、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川、新潟、石川、山梨、長野、静岡、京都、大阪、兵庫、奈良、島根、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、宮崎、鹿児島、の26府県であった。これらの府県に対し、質問紙においては前回の回答を添付し、当該政策の有効な結果、問題点、また政策の変更等について記述してもらった。追跡調査に対し回答があったのは、秋田、茨城、栃木、千葉、新潟、山梨、京都、兵庫、奈良、島根、山口、香川、高知、福岡、鹿児島の15府県であった。現在、回答の整理は終了し内容を分析中である。II、平成17年度調査に回答がなかった都道県に対する再調査に対して回答があったのは、埼玉、東京、富山、岐阜、三重、滋賀、和歌山、鳥取、広島、熊本、大分、沖縄、の12都県であった。質問項目は以下のとおりである。1)児童虐待防止のためには、虐待ハイリスク家庭の把握とリスクの低減が重要である。そのためにどのような政策を実施しているか。また子育て家族を孤立させない一般的な子育て支援政策はどのようなものか。2)要保護児童対策地域協議会について、*設置市町村の数、*ネットワークへの主な参加機関、*主な活動、*課題。3)当該自治体 における政策の特徴、有効な点、問題点について。現在回答の整理・集計は終了し、内容を分析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の「研究目的」には、「先行調査に協力・回答して戴いた府県に対して、一定の期間をおいた現時点での政策実施の結果に対してのアセスメント調査を行う」と述べている。平成23年度においては追跡調査のみならず、前回調査に回答がなかった自治体への再調査も実施した。前回調査、今回調査のいずれか、あるいは両方に回答のあった都府県は38にのぼり、調査への協力に感謝するとともに行政サイドにおける関心の高さも伺える。所期の目的としての政策アセスメントにはまだ至っていないが、その基礎データの収集は行えたので達成度はまずまずと考える。 しかし政策アセスメントの枠組についての検討は不十分であり、何を基準とするのか(合目的性、合規性、公平性、効率性、有効性等)、また定量的な尺度として何を用いるのか、調査の回答に依拠するかぎりにおいては評価主体は行政内部であるが、他にも議会、住民、NPO,第三者専門機関等も評価主体足りえるが、これらについてはどうかなど課題も多い。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成17年度の調査結果の分析から、政策的対応のうち重要なものとして、(1)母子保健事業の充実、(2)ペアレンティング教育および子育て相談・支援事業の実施、(3)民間の力の活用、(4)要保護児童対策地域協議会の機能強化の4点を抽出した。平成23年度の調査においても、これらの項目が中心になっている。 眼を転じてアメリカにおける児童虐待への政策的対応を見ると、1960年代における親子分離至上主義への批判から家族維持的政策へ変化する中で、1970年代~80年代に始まる妊娠中からの教育、母子保健等の早期介入プログラムの有効性が確認されている。また児童虐待への関心が高まるなかで、企業、市民グループ、地域社会等による過剰なまでの虐待防止・家族維持サービスの提供があったが、サービスの量と期間、質等に関する成果評価がなされていないことが問題視されている。 これらを踏まえ次年度以降は、虐待防止とその成果評価における民間団体の活動を、調査に基づき明らかにしていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究は、民間団体への質問紙調査、インタビュー調査を中心に据えて行いたいので研究費の使用計画は以下のようである。物品費 300,000円旅費 100,000円人件費 80,000円その他 20,000円
|