2012 Fiscal Year Research-status Report
地域社会を基盤とする子ども虐待防止:行政の政策と民間の活動
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23530702
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
井上 眞理子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (50137171)
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Keywords | 子ども虐待への政策的対応 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
平成24年1月~2月に実施した全国の都道府県に対する調査結果について分析を続行した。この調査は先行する「児童虐待への政策的対応についての調査」(平成16~17年度科学研究費補助金基盤研究(C))に対し追跡調査を行うことを目的としたものであるが、同時に先行調査において回答がなかった都道府県に対しては同一の質問文で再度調査を行った。追跡調査に対し回答があったのは、秋田、茨城、栃木、千葉、新潟、山梨、京都、兵庫、奈良、島根、山口、香川、高知、福岡、鹿児島の15府県であった。また平成17年度調査では回答がなかったが、今回の平成24年度調査に対して回答があったのは、埼玉、東京、富山、岐阜、三重、滋賀、和歌山、鳥取、広島、熊本、大分、沖縄の12都県であった。 7年の間隔をおいて実施された両調査結果に基づき、全国の地方自治体における子ども虐待への政策的対応の変化、進展について把握するというのが研究のめざすところであり、現在は分析の途中であるが、注目すべき点を多く見出している。その第一は、両調査の間に当該自治体において発生した子ども虐待(とりわけ虐待致死事件)をきっかけとして(それ自体は極めて残念なことではあるが)、政策的対応の充実が著しい自治体の存在である。その一例は秋田県である。秋田県では、平成18年4~5月に藤里町でいわゆる「秋田連続児童殺傷事件」が発生したが、これは平成17年度調査の翌年のことであり、その反省にもとづき秋田県における政策的対応は驚くほど細やかになっている。乳児家庭全戸訪問事業に代表される虐待ハイリスク家庭の把握、NPプログラムの導入等に代表されるリスク低減施策、多様な子育て支援政策等である。その第2は多くの自治体がNPプログラムのようにピアカウンセリング的手法を導入していることである。第3に民間団体の活用である。これらをさらに詳しく検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書の「研究目的」には、「先行調査に協力・回答して戴いた府県に対して、一定の期間をおいた現時点での政策実施の結果に対してのアセスメント調査を行う」と述べている。平成23年度においては追跡調査のみならず前回調査において回答がなかった自治体への再調査を実施した。前回調査、今回調査のいずれか、あるいは両方に回答のあった都道府県は38にのぼり自治体における子ども虐待への政策的対応への関心の高さを物語っている。平成24年度はこの追跡調査、再調査の結果を分析することに終始した。当初の計画では政策実施の結果に対するアセスメント調査は平成23年度中に終了することになっていたが、調査の実施が年度末であったこと、また報告者が平成24年度末をもって京都女子大学を定年退職し平成25年度より奈良産業大学に就任することに決定したため、計画の進行が全般的に遅れている。しかし「研究実績」の概要でも述べたように、都道府県からの回答内容は各自治体における子ども虐待への政策的対応についての多様かつ豊富な情報に富んでいる。平成25年度中に政策的対応についての分析・評価とあわせ民間団体による虐待防止活動についての調査を実施しこれらを総合して単行本として刊行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」でも述べたが、今後は都道府県の政策的対応の結果についての分析・評価と同時進行で、民間団体・民間人による子ども虐待防止活動についての調査を実施したい。その際、調査対象としては先に実施した全国の都道府県への追跡調査、再調査への回答の中で挙げられた民間団体・民間人を抽出して調査を行う予定である。多数の例があるが、秋田県の「子ども・子育て支援推進地区協議会」やNPプログラムの指導者、山梨県の「児童虐待対応協力員」、山口県の「虐待防止地域サポーター」やNPプログラムの指導者、富山県の「子育てミニサロン」と子育て相談員、岐阜県のNPプログラムファシリテーターや「ぎふイクメンプロジェクト」、滋賀県の児童虐待対応指導員や「子どもと家族を守る家」の認定等々である。 調査の方法としてはインタビュー調査を主としこれを補うものとして質問紙調査を実施する。調査において明らかにしたいのは、①活動の具体的な実態、②活動参加者の属性、意見等、③民間団体・民間人と行政の政策実施との関連、また分業の形態、④今後の展望等である。 これらの自治体調査および民間団体・民間人調査の内容を分析・総合し単行本として出版する手はずを整えることにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度請求額は100,000円であるが平成24年度未使用額が271,616円あり、これを繰り越して、平成25年度所要見込み額370,000円の概算払いで支払請求書を提出した。 「今後の研究の推進方策」で述べたように平成25年度の主要な研究内容が子ども虐待防止の活動を行っている民間団体・民間人に対するインタビュー調査および質問紙調査であることから、調査のための旅費、調査結果整理のための謝金等に重点をおいた研究費の使用計画となている。概算では、物品費が100,000円、旅費が200,000円、謝金(調査結果整理のためのアルバイターへの謝金等)が60,000円、その他が10,000円である。
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