2011 Fiscal Year Research-status Report
支援と受援の社会学:災害に関わる市民活動に焦点をあてて
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23530711
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅 磨志保 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 災害に関わる市民活動 / 東日本大震災 / 広域連携に基づく支援体制 / 広域避難者への支援 / 受援力 / 原発避難 |
Research Abstract |
東日本大震災の発生に伴い、このテーマに関わる事象が大きく動くことになった。この大災害で発現した課題に直接取り組み、そこから得られる知見を将来に生かしてくことが研究として重要であるという観点から、本年度は、基本的な枠組みを維持しつつも、この災害で顕在化した課題に焦点を当てた調査を行った。以下、本研究の柱となる課題(1)~(4)の実績概要を記す。(1)「災害救援に関わる市民活動」に関する調査 大震災後の救援体制の構築において、従来型の(社協が母体となる)災害ボランティアセンターの機能不全・限界が指摘される一方、「(ボランティアは)被災地に行くな」という言説が広く流布し、そのことが新たな問題をもたらしている可能性を指摘、併せて全国的な支援体制の構築とそれが果たした役割について考察(以上、共著書の分担執筆)。(2)「復興-減災に関わる市民活動」に関する調査 原発事故をめぐる一連の問題は、日本がこれまで経験したことのない難題であり、何をもって「復興」と言えるのか、また広域避難者の実態も、見え難い。今年度はこの問題に取り組んできた。まず警戒区域の自治体と連携し、当該自治体から広域避難した者が抱える問題について聴取調査を実施、年末に報告書を作成。その後も自助組織の結成・広域避難者支援体制の構築過程の観察聴取を継続。(3)「討議の『場』」に関する調査 震災後、様々なレベル(自治体規模~全国を視野にいれた)で、直面する課題について議論する場が、多様な形(新規に結成したり、既存の団体間連携を母体としたり)で設けられてきた。これらにできるだけ参加し、そこでの議論を記録化すると共に関係者に聴取調査を行った。(4)文献調査:「支援」に関する実証研究・理論研究の収集と分析 今年度は上記(1)~(3)の課題に焦点を当て、文献・資料収集も東日本大震災に関する資料を中心に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災後に発生した事象に焦点を当てた調査を、様々なレベルで実施することができた。またその過程で活動実践者との連携、社会学や災害・防災の研究者と連携・協働が進み、個人では得られない多くの知見と成果を得ることができた。 こうした国内調査の緊急性・重要性に鑑み、今年度予定していた海外調査は実施しなかった。また文献調査も、過去や海外の理論研究については十分に行わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、東日本大震災に関わる事象に焦点を当てた調査を継続する。特に事態が進行している原発事故に伴う広域避難(とりわけ自主避難)の実態と避難者への支援体制の構築に関する調査を優先的に進めていく。この調査を通じて「支援の権力性」や、「支援-受援関係」に関わる問題に関する考察を深めていく。また津波被災地の復興まちづくりや経済復興支援活動(コミュニティビジネス)に関する調査についても並行して行う。 依然として国内調査の重要性が高いため、海外調査に関しては、状況を見て次年度前半中に方策を再検討する(中止や場所の変更など)。文献調査に関しても、複数の現場で起こっている事象を比較できるような枠組みが必要になってきているため、支援に関するものと併せて、災害社会学の理論研究についても積極的に収集していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、今年度同様、国内調査の重要性が高いことが想定されるため、調査旅費を必要とする。また、無駄を減らし、かつ現場への負担を抑制するため、引き続き活動実践者や研究者との連携・協働を進めていくが、この連携体制を維持・充実させていくために、事務作業(記録・資料整理・連絡調整など)に対する謝金を支出する。またフィールドワークで使用する物品(モバイル系機器、データストレージ等)も必要である。
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