2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530716
|
Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
板原 和子 大阪体育大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50390175)
|
Keywords | 精神障害者処遇 / 江戸時代 / 近世都市 |
Research Abstract |
精神障害者に対する公的な処遇が始まったのは江戸時代であり、都市における社会問題への対応のひとつとして実施された。これまでは江戸を中心に研究されてきたことから、本研究は、江戸以外の大坂、京都、長崎、金沢、仙台の各都市について調べ、江戸時代の処遇の性格をさらに明瞭にすることを目的としている。24年度は、長崎(長崎歴史文化博物館、県立図書館)に2回、金沢(金沢市立近世玉川図書館近世史料館、金沢県立図書館)に1回に出向き、現地に保存されている史資料から精神障害者に関する「仕置例」などの事例を集めた。長崎では、長崎奉行所判例集「犯科帳」(翻刻版全11巻)から精神障害者による事件等を大量に収集し、その後分類整理を行った。これまでのところ、天領である長崎は江戸の処遇との共通性が見いだせるが、例えば江戸の「溜預」の「溜」にあたるものが長崎では「非人原」となっているなど、名称の違いとともにその性格について比較検討をしているところである。金沢には近世資料保存が充実しており、藩法や「仕置」の事例等を集めたが、まだ閲覧の済んでいない史料がある。長崎、金沢、仙台(他用での訪問時に県立図書館に行った)の3都市では、地元での歴史研究団体が存在し研究が盛んである。それらの団体が発行している地元研究誌も購入・複写することができ、一次史料以外の文献・資料の収集も進んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
史資料の収集は、予定した長崎、金沢で実施できた。予定した京都での史資料収集は実施できていないが、他用で訪問した仙台で(文書館閉館中のため宮城県立図書館のみ)、史料の存在を確認することができた。前年度の反省を踏まえ、史資料収集とともにその整理、翻刻に力を入れたが、それに時間がかかり、都市間の比較検討に必要な資料整理に至らず、論文化することができなかったため、上記の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度は、史資料収集できていない京都、仙台に出向き、予定した5都市すべてでの史資料の収集をひとまず完了させる。そして都市間の比較検討ができる状態までに史資料の分類・整理を行う。都市ごとの史料の集積の違いから、都市ごとに軽重がでたとしても一定のまとめができるよう工夫する。 江戸時代の精神障害者処遇史研究はそれのみで完結するのでなく、明治期以降の日本の精神障害者に対する法制度や国民の「態度」形成に大きな影響を与えていることを視野に入れて行っている。最終年となる本年度は、以上のことも踏まえ、3年間の成果を論文あるいは出版物によって公表し、精神障害者処遇史研究に寄与したいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の研究計画に基づき、調査研究のため仙台、京都(できれば金沢も)への旅費を使用する。また、各文書館等での複写、史資料・文献の購入、さらに収集した史資料の整理補助を依頼し、その謝金にも使用する。上記で合計33万円使用する予定である。
|