2011 Fiscal Year Research-status Report
「ケアの連続体」の形成の視点に基づく高齢者ケア・サービス体系の国際比較
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23530720
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
平岡 公一 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10181140)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / フランス / スウェーデン / イギリス / ケアの連続体 / 高齢者ケア / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス、日本の5カ国を対象として、「ケアの連続体」の形成という観点を基礎におきつつ、「入所施設の住宅化」と「多様な居住の場と中間的な性格のサービスの整備」に向けての高齢者ケアのサービス体系の変容の過程と、市場化・個別化・重点化等の制度改革がそこに及ぼした影響についての比較分析を行うことである。 平成23年度は、3年の研究期間の初年度であり、(1)幅広く先行研究を検討し、研究の枠組みを確定させるとともに、(2)アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリスについて、学術文献および政府の文書、報告書、統計等の資料を収集し、高齢者ケアのサービス体系の変化、市場化、個別化、重点化等の制度改革について集中的に検討し、さらに(3)イギリスと日本について、地域レベルのケーススタディのための文献資料の収集を行った(当初予定していたイギリスでの現地調査は、平成24年度に実施することとした)。 以上の研究を実施した結果、(1)国際比較研究であって、日本を比較対象に含み、かつケアの連続体に着目した先行研究はほとんどないこと、(2)単に疾病や要介護状態に着目するのではなく、frailty(虚弱性)という観点から心身機能の低下とそのことにより生じる保健福祉サービスのニーズを総合的にとらえることの必要性が指摘されるようになっていること、(3)コミュニティケアの第三段階への移行、市場化・個別化・重点化等の制度改革の方向性は共通であるが、実際の改革の内容と進捗状況は、制度的遺制や政治的要因などにも影響され国ごとの差が大きいこと、などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体に、当初に設定した「研究実施計画」に沿って研究は進展しているが、先行研究の検討と文書・資料の収集に予想以上の時間をとられたことと、他の教育研究上の業務とのスケジュール調整の困難により、当初予定していたイギリスでの現地調査は、年度内に実施できなかった(平成24年9月に実施予定)。その意味で、研究の進行に若干の遅れが生じているが、研究の手順・方法・枠組みについては変更の必要がないことが確認できたので、最終的には予定された研究期間のうちに、「研究の目的」は十分に達成できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次のとおり研究を推進し、その成果を、順次、国内学会および国際学会(第20回世界老年学会議を予定)で発表するとともに、論文としてとりまとめて公表することを予定している。1.平成23年度に実施できなかったイギリスでのヒアリングと資料収集を平成24年度の前半に行い、続いて、24年度から25年度にかけて順次、アメリカ、フランス、スウェーデンについて、現地でのヒアリングと資料収集を行う。2.イギリス、アメリカ、フランス、スウェーデンの各国について、最新の政策動向、改革の内容等についての文献、資料の収集を継続し、収集した文献、資料の分析を進める。3.日本国内については、地域レベルのケーススタディを、現地でのヒアリングと資料収集を含めて実施する。4.各国において高齢者に対して提供されているサービス・パッケージのモデルを、心身機能の維持・低下の状態、所得階層等のカテゴリー別に構築する手法について検討を進め、モデル分析に必要な各国の統計データの収集を進める。各国のデータ・アーカイブが提供している調査データ(マイクロ・データ)を探索し、本研究のために活用できるものがあれば、それを借り受け、二次分析によりモデル分析に必要な統計量を算出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の直接経費のうち600,270円が未使用となっているが、これは、主に、当初予定していたイギリスの現地でのヒアリングと資料収集が、先行研究の検討と文書・資料の収集に予想以上の時間をとられたことと、他の教育研究上の業務とのスケジュール調整の困難により、年度内に実施できず、平成24年度に実施することとしたためである。この未使用分の経費については、主として平成24年9月に実施予定のイギリスでのヒアリングと資料収集のための調査旅費(50万円を見込んでいる)に充当することを計画している。未使用額の残り10万円強については、現有の備品を活用することで平成23年度中には購入しなかった備品の購入費(パソコン1台15万円)の一部に充当することを計画している。
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Research Products
(2 results)