2012 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者の語りの実践と関心コミュニティの展開可能性
Project/Area Number |
23530721
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
南山 浩二 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60293586)
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Keywords | ナラティヴ / 精神障害 / リカバリー / ストレングス / セルフヘルプ / ACT / 地域生活 / 日本 |
Research Abstract |
本年度は、1.引き続き、障害者が経験を語るグループの参与観察を中心としたフィールドワークを行うとともに語りの実践を介して関心コミュニティを獲得した事例を抽出し各事例ごとにエコマップ暫定版を作成すること、2.障害者が自らの経験を語ることを可能としている集団・相互作用の特性や語り手にとって他者に自らの経験を語るという実践の持つ意味、聴衆にとって経験の語りを聴き共有することの意味に焦点をあてた論文を執筆するとともに、本調査研究の中間報告を関連学会で行うこと、3.個別事例に焦点をあてフィールドワークを行い関心コミュニティの規模・構成、各関係の紐帯の強弱、他の資源・サービスの付置・利用状況を再検討・再確認しエコマップを完成させること、の三つを課題とした。 1については、語りの実践の活動についての継続的な参与観察を通じて可能性を前提としたストレングス視点、活動への参加を促すプログラムの構造化と活動から<降りる>ことを担保する文化の維持、医療モデルの戦略的使用と医療モデルに限局されない物語の創出を担保する語彙への寛容性の涵養などの諸特徴が明らかとなった。また語りの実践を介して関心コミュニティを獲得した事例を抽出し各事例ごとにエコマップ暫定版を作成した。2については、清水新二編『家族臨床社会学』(放送大学出版会・H25年6月刊行予定)に関連する論文を執筆するとともに本研究の知見に基づいた報告を学会にて行った。3については、語りの実践を介して関心コミュニティを獲得した障害当事者の語りから、ACTなどの訪問サービスがもつ意義が極めて大きいことが明らかとなったことから、利用者の承諾を得た上で訪問サービスの参与観察や利用者・支援者への聞き取り調査を追加的に実施した。 なお、インタビューについては、精神障害当事者14名、精神科医1名・精神保健福祉士4名・作業療法士1名の計20名に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
語りの実践の場への参与観察については継続的に実施することができ、経験を語ることを可能としている集団・相互作用の特性などについては、「研究実績の概要」で既述したような知見をうることができた。またその知見については、一部、学会報告や論文として公表することができた。 しかし、自らの経験を語るという実践の持つ意味、聴衆にとって経験の語りを聴き共有することの意味などについて明らかにするため障害当事者を対象としたインタビュー調査を実施したが、対象者の日程上の都合や体調とのかねあいから、実施時期が大幅に年度末にずれこんでしまうこととなった。また、調査の過程において、語りの実践を介して関心コミュニティを獲得した障害当事者にとってACTなどの訪問サービスがもつ意義が極めて大きいことが明らかとなったことから、訪問サービスについての参与観察や利用者・支援者への聞き取り調査を追加的に実施する必要性が浮上した。 このような事情から、当初の計画に比べ論文化の作業に遅れが生じたとともに、関心コミュニティを形成した事例についてのエコマップについては、最終版確定に至らなかった状況にあった。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べたように、エコマップの確定版作成および論文化の作業に遅れるが見られることから、この作業に早々にとりかかっていくこととしたい。 そのうえで、平成25年度は、当初の計画通り、1.前年度までの調査結果をふまえ最終的なとりまとめにとりかかり、この過程の中で、必要性が認められれば補足的な調査も実施する、2.上記の作業をふまえつつ、論文を執筆し投稿するとともに、関連学会にて報告を行う、3.最終的には、上記の論文・報告を基盤として報告書のとりまとめを行い刊行し、ホームページに研究報告の概要を記載し広く公開する、の三つを具体的な目標に設定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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