2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジア国際システムの転換と日本医療保険制度の展開、1920年代~1950年代
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23530722
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉田 米行 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00216318)
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Keywords | 国債研究者交流ドイツ / 国際情報交換アメリカ / 健康保険制度 / 国民健康保険制度 / 東アジア国際関係 |
Research Abstract |
今年度は、医療保険をめぐる日本国内の政治過程と国際政治経済との関係、日本の再軍備、冷戦の激化、米国の巨大な軍事力等、国際問題の視点を取り入れて日本の医療保険制度を分析した結果、1930年代後半からの大東亜共栄圏構想、連合国軍占領期における国際関係からの隔離、1950年代の日米同盟体制という日本を取り巻く国際関係の変容に連動する形で、日本国内に医療保険制度が形成されていったという仮説を、一次資料を用いて検証することができた。特に、当初、東アジアにおける国際関係の変容と日本の医療保険制度の 展開に連動性がある、という仮説をたてていたが、一次資料を精査すると、両者の連動性を実証的に論証できつつある。今年度は、アメリカ政治やアメリカの移民研究者と深く議論を交わす機会があり、アメリカの動きが東アジアに与えた影響や、その変化が日本国内の医療保険制度に与えた影響に関して貴重な示唆を得ることができた。また、国会図書館での一次資料の収集やアメリカ大使館員とのディスカッション等を通じて、日米関係と日本の医療保険制度の展開に関する洞察を深めることができた。さらに、ドイツのドルトムント工科大学での講演と意見交換によって、国際関係と福祉国家との関係に関して、ヨーロッパの視点や考え方を吸収することができ、研究に幅を持たせることができた。英文校閲を経て論文2本をイギリスとアメリカの査読付学術雑誌に投稿し、2本とも刊行されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は東アジア国際関係の変容に連動する形で日本国内の医療保険制度が形成されていったという仮説を二次資料・一次資料を使って検証をすすめ、論文も査読的学術雑誌に2本掲載されたことで、ある程度実証することができたと考えることができる。ただし、査読の講評でも指摘されたことだが、一次資料にこだわり、細部にわたる議論に深く入り込んでしまい、大きな構図が途中で見えなくなる危険性が多分にあるように思える。研究はおおむね順調に進展しているものの、この批判を真摯に受け止めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度末(3月)にベルギーとフィンランドの大学を短期訪問し、研究の中間報告と専門家との意見交換をする予定だったが、父親の突然の入院によりその出張を取りやめざるをえず、次年度に使用する予定の研究費となった。次年度は研究の最終年度であり、国内外の研究者を招聘してこれまでの分析結果に関する講評をいただいたり、意見交換をしたい。最終報告書をまとめることができるようにし、論文の執筆、国内外での学会・研究会発表を積極的に行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、第一に、これまでの分析結果に対する講評をいただいたり、意見交換をするために、国内外の研究者を大阪大学に招聘するのに研究費を使う予定である。第二に、東京の国会図書館、各種大学図書館に所蔵されている一次資料を収集するための旅費として研究費を使う予定である。第三に、論文執筆や国内外での研究発表のために旅費として研究費を使う予定である。第四に、論文執筆のためにこれまで収集した資料の整理・解析・分析のために必要な物品に研究費を使う予定である。
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