2013 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ女性団体連合国際ネットワークに見るザロモン研究‐ICWとICSSWの連携役
Project/Area Number |
23530729
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡田 英己子 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (10233321)
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Keywords | 社会福祉関係 / A.ザロモン / ソーシャルワーク教育史 / ジェンダー史 / フェミニズム / ドイツ / オーストリア / 合衆国 |
Research Abstract |
本研究「ドイツ女性団体連合国際ネットワークに見るザロモン研究―ICWとICSSWの連携役」は、比較ソーシャルワーク教育史として、ドイツのA.ザロモンの社会政策提言「同一価値労働・同一賃金」を機軸に置き、1920年代にヨーロッパ大陸型ソーシャルワーク教育の第一人者と評される経緯を明らかにしていくものである。彼女が合衆国ソーシャルワーク校で講義中断の憂き目にあう1930年代の合衆国博愛事業団体との関係・背景の解明も含む。BDF(ドイツ女性団体連合)理事である彼女の社会政策提言を、BDF上部組織のICW(国際女性評議会、1888年設立)のフェミニスト達は、戦時期をはさんでどのように受けとめるのか。ヨーロッパ大陸の社会事業学校を束ねる彼女を、いかなる国内外の人脈が支えるのか。「母性」言説の国ドイツに身を置くザロモンは、福祉職国家(州)認定資格と女性公務員雇用拡大にその打開策を求める。以上の経過をザロモンの生き方を通して解明していくことが、本研究の最終目的である。 上記の研究方針は初年度から同じで、3年目は2年目の作業を引き継ぐ形でBDF文書の分析を主軸にしつつ、ハル・ハウス関連文書ならびにICW会議録の読み込みを進めた。 ザロモンがICWで注目される契機となる1904年ベルリン大会の背景を、ICW会議録から読み取った。また、ICW内でのリベラル派と保守派との折れ合いの関係(結果的には保守派がユダヤ系組織でも主導権を握っていくのだが)と、ザロモン抜擢(1909年)に至る動きがかなり鮮明にされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平24年までとは異なる視点から、A.ザロモン/BDF側から見たフェミニストによる国際ネットワークの動きが平25年初夏に発見できた。 ICWの1904年ベルリン大会でA.ザロモンとボランティア・グループの実務能力の高さに合衆国側ICWユダヤ系組織が注目(この報告が会議録に盛り込まれたのは1909年で、ザロモンの抜擢の年と符合)し、高い評価を得た。この他国からの評価が持つ意味は大きい。 ここからなお仮設的ではあるが、大西洋を越えたフェミニストによる国際ネットワークづくりがより具体的に把握できた。さらに、合衆国ソーシャルワーク教育界で、BDF脱会後のA.ザロモンがヨーロッパ大陸を代表する社会事業・教育論の論者であるとの評価を定着させていく。その下地になるのがフェミニストの国際ネットワークであり、そのことがICW会議録からはっきりと読み取れた。 同時に、第1次世界大戦前後から、反ユダヤ主義・ナショナリズムがICWとICWの合衆国・ドイツ支部で台頭する背景もわかった。1904年頃のICW傘下のユダヤ系組織はリベラルなユダヤ系フェミニストが仕切っていたため、ザロモンの抜擢が可能になったのである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、海外調査と国内での作業を継続する。本研究の4年目は学会報告を1本予定している。BDF文書分析と同時にICW会議録(平25年購入)分析を行う。 ケガのため、平26年海外調査はベルリン他のドイツ語圏に限定する。長期の海外調査は5年目に予定しており、1回ないし2回、計半年以上にわたってドイツ語圏を中心に滞在する計画である。合衆国でのICWとザロモン関連史資料については、ベルリンの社会問題研究所や図書館を通して入手可能なものは、随時継続して収集を進める。 最終年度に合わせて、可能な限り史資料取り寄せや古書購入(ICW関連は余りないが、見つけ次第購入)を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平25年初夏にケガ入院(3か月)し、リハビリ(週5回)のため、当該年度の海外調査を取りやめざるを得なかった。 次年度以降に海外調査を集中して行うので、その旅費として使用する。2~3回の調査を計画しており、海外滞在期間は総計半年を超える予定である。
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Research Products
(2 results)