2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530744
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
鎌田 真理子 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (30320542)
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Keywords | 権利擁護 / 成年後見 / 地域福祉 / 市民後見 / ソーシャルワーク |
Research Abstract |
研究実績は以下の3点に集約される。第1として研究対象の権利擁護センター類型化のための情報の蓄積を行うことができた。第2として研究対象を同一にした他の研究調査チームが研究をスタートさせ、研究の共通点と相違点についての確認と示唆を得ることができた。第3として都道府県社協段階で運営の「運営適正化委員会」実施の調査結果を参考に本研究との関連性について分析や検討を行い今後の権利擁護システム構築に参考となる点を確認できたこと等である。 研究業績の第1の情報内容とは、前年度に引き続き国内における先駆的活動を展開している権利擁護活動組織の聴き取り調査および情報収集を実施した。①先駆的なモデルとして評価が高いとされる「芦屋市権利擁護センター」、②「NPO法人西成の会」である。この②は前年度に調査をした西成区の大阪成年後見支援センターと同地区で活動を展開している組織で、同一地区での活動ということで組織による相違を確認することができた。③「北海道南富良野社会福祉協議会・生活支援センター」・④「NPO法人白浜レスキュー」・⑤「NPОはるかぜ成年後見支援センター(奈良)」・⑥日本社会福祉大学権利擁護センター調査報告チーム協力)である。特に⑥からは2012年度にNPO法人ASネットが支援する権利擁護センターへの質問紙票留め置き調査実施とその中間報告を受けた。本研究でも郵送留め置き調査の企画をしていたが、今年度は昨年に続き、直接インタビュー形式の聞き取り調査を中心とした質的調査を進めてきたため、量的調査の⑥と本研究の独自性について検討することができた。⑥は権利擁護センター開設のためのマニュアル作成を目的とし、本研究は権利擁護システム構築として地方都市でのシステム構築のあり方を研究するという相違点が明確になり、研究目的やアプローチの相違について確認ができたとともに今後の研究に示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度は70%の評価と判断している。調査研究の達成内容を本研究で注目してきた権利擁護システムで注目するポイントは、権利擁護組織体の完成や開設までの経緯、人口規模、地域ニーズ、担い手、システムの特性・現状と課題である。これらの課題について聞き取り調査及び研究会での情報提供から明確になってきたのは、地域ニーズと開設までの経緯は密接に関わっている点である。 この顕著な例として大阪市西成区に開設している「西成の会」は判断能力が低下したホームレスや生活困窮者への成年後見活動を社会福祉士や司法関係者らがボランティアで「専門職後見活動」を展開している組織であるが、前年度に調査を実施した大阪成年後見支援センターは同地区で無報酬の「市民後見人」の養成事業と共に担い手の養成研修と活動支援体制を整備している。この地区は「親族後見人」を持たない対象者を多く抱える地域であることから、この両組織が独自に共存する権利擁護システムが存在する地域である。 このように特殊な地域事情から必要性に迫られる形で開設している地域ニーズとの関係を整理する必要があると判断している。人口規模との関係については権利擁護組織体の開設には大きな相関関係はみられないことが南富良野社協事例で一部明確になってきた。本研究で注目してきた「市民後見人」については、養成プログラム実施と活動領域の実証的研究も行っているが、金銭管理に関与できる人材育成のハードルは高く、日常生活の身上監護に係る程度が一般的であることが判明してきた。 後見受任数の伸び悩みについて解明しようと福島県内ぱあとなあ登録の社会福祉士への郵送留め置き調査を計画していたが、専門職後見人よりむしろ親族後見人の課題が重要なテーマとなってきたため、一部研究計画の微調整を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度においても聞き取り調査を継続していく。本研究では全国権利擁護支援ASネットに加盟している権利擁護センターを中心に聞き取り調査を実施してきたが、日本福祉大学チームが本研究の対象のセンターに郵送留め置き調査を実施し、中間報告を平成24年11月に行った。この調査結果は参考となる点も多く示唆も得られたが、当該ネットワークに加盟していない後見活動組織も多数あり、全国的に多様な地域事情やニーズから発足しているセンターを含めた調査(通年実施)を本研究では継続していきつつモデル類型化を試みるものである。 受任者に関する課題については、品川区の事例を検討した結果、市民後見人の質と量を担保し継続していくことは地方都市の臨床的な取り組みから困難であることが、判明してきた。市民後見人での成年後見人の受任は、課題の分析を進めていくとともに、受任者で多数を占め今後も増加が見込まれる親族後見人の現状と課題についても分析を進めていく必要性が見えてきた。親族後見人に関する家裁の支援体制及び権利擁護センターでの支援システムについて情報収集が必要となっており、聞き取り調査の実施をしていく予定である。親族後見人については先行モデルとなっているドイツ世話制度でも市民後見人から親族後見人へ受任のウエイトはシフトしてきている。このためドイツ世話法での親族世話人の分析を進める必要性が見えてきた。さらに被後見人の意思尊重の仕組みとして英国2005法やIMCAと呼ばれるコミュニケーション支援者の存在も本人中心支援の取り組みで注目されており、我が国の権利擁護支援システムの意思確認のあり方を各事例から検証する。 また、国内で平成26年度開設に向けた権利擁護センターの準備を進めている自治体を事例として分析を進めていく中で行政内組織の課題にも注目していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事例聞き取り調査は次年度も継続していく。このため出張旅費には支出のウエイトは高くなる傾向がある。聞き取り調査を予定していく際に、昨今の天候変動や気象状況の悪化の厳しさから調査予定を断念することも発生したため(北海道南富良野町)、情報を入手し研究会なども活用したうえで聞き取り調査や情報収集を検討していく予定である。 加えて国内出張旅費は研究成果報告のための学会報告でも「旅費」での使用予定である。物品費で購入を当初から予定していた携帯用印刷機については、昨年の購入を手控えていたものを購入予定である。このほかには研究用書籍と印刷用紙の購入を予定している。 一昨年から社会福祉士への郵送留め置き調査を予定していたが、研究計画の微調整から手控えていた。社会福祉士への調査よりもむしろ権利擁護センターおよび成年後見センターなど全国で活動を展開するあらゆるセンターへの調査の実施が重要であることからこれらを対象とした質問紙調査を予定しており、印刷、郵送、データー入力の人件費での支出も発生する。 さらに臨床実践家や研究者からの情提供者への謝金の発生も予定しているが、印刷製本費は最終年度での使用を検討している。
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