2013 Fiscal Year Research-status Report
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23530744
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
鎌田 真理子 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (30320542)
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Keywords | 権利擁護 / 成年後見 / 地域福祉 / 市民後見 / ソーシャルワーク / 権利擁護センター / 成年後見センター |
Research Abstract |
前年度までに得られたデータからタイプ別の分類や内容の分析を進めることができ、おおむね予定していた研究の成果を得ることができた。成果は以下の3点である。 ①権利擁護システムの実現は大都市圏だけのものではなく、人口規模の小さな町村レベルでも開設は可能であることが判明した。さらに権利擁護システムの創設は地域課題の解決のために行政・社協・障害当事者家族・専門家が中心となっているケースが多く中立性を担保した権利擁護システムの全国的な組織化も行われている。この中立性こそが権利擁護システムの必要条件であると考えられる。 ②臨床現場における権利擁護システムの環境整備を行ってきた。権利擁護システムをセンターを開設する前の準備段階だが、行政組織内に当該機能のシステム構築の準備室を開設させ、2年間の準備作業に取り掛かる了解を行政協力のもとに確定した。平成26年度から始動している。この臨床モデル実験から権利擁護システムの構築をさらに深化させていく計画である。 ③韓国ヒヤリング調査をする機会を得た。韓国では日本の「成年後見制度」を大いに参考としたスタートであり、極東アジアでは最新の権利擁護システムもである。このヒヤリングでは制度設計および制度創設側の司法機関や専門家関係者へのヒヤリングおよび韓国研究者とのディスカッションの場に参加し、わが国の権利擁護システムの課題を明確にできた。 権利擁護システムを一般の人々に広く機能させるうえで、市民後見人に大きな期待を持つ韓国だが、わが国の市民後見人の養成と活用は必ずしも成功しているとは言いがたく、帰国後に県内で早期から活動を進めてきた市民団体にインタビュー調査を実施した。この結果から地域ごとにその背景から活動に至る多様性や制限があることも理解できた。今年度は市民後見人と試行的センター等のデータを追加し、研究報告にまとめ上げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度は80%と判断している。この20%のマイナス評価は、平成26年度から予定の試行的スタートをするA市での権利擁護システムの開始が、予定よりやや遅れたことである。 東日本大震災前から権利擁護システムの必要性の理解とそのシステムの在り方についてA市行政・専門家・一般市民と検討しながら取り組んでいたが、東日本大震災後に原発被災者を最多数者受け入れたA行政との連携であるため遅延が生じた。しかし、平成25年度に韓国研究者との情報交換の機会を得て、制度開始前後の状況から権利擁護システム全体の理解や、我が国の将来に向けた制度の在り方の俯瞰ができた。韓国では制度開始の準備を進めながら、日本の権利擁護システムや成年後見制度の経験知に関する情報の共有に熱心な印象を受けた。今後も本研究では、協力関係を組むことができた韓国関係者および我が国の特定非営利活動法人全国権利擁護支援ネットワークとの連携や情報の共有を持ちつつ、極東アジアにおける権利擁護システムの充実化の促進に協力していく予定である。 韓国調査帰国後にA市行政内部での権利擁護システムの試行が決定し、平成26年~27年度に時間をかけながらシステム構築の体制整備を進めていくことになった。体制整備の大きな課題は権利擁護システムでは後見人などの担い手不足だが解決されていない。その解決策としての市民後見人の養成は活性化されているが持続可能性は見出されていない。本研究においてもこの点が課題であると認識はしており、今後国内外の情報収集をさらに行う必要があると考えている。 以上の内容から、現在までに行政との権利擁護システム構築に向けた臨床試行のスタート、市民後見人の養成支援の重要性、システムのプロトタイプ分類などを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は地方都市など規模の小さな行政においても人口の多寡にかかわらず権利擁護システムを立ち上げることができる実現可能な権利擁護システムの構築である。本研究では以下の4点を今年度の研究推進策とする。 ①プロトタイプのモデル分類の試みを行う。権利擁護システムの構築に向け、システムの立ち上げについて国内のプロトタイプ的な事例調査を行ってきたが、韓国調査を経て改めて地域住民や地域資源との連携の重要性を認識してきたところである。今年度は調査で不足している地域資源との連携が参考になる岡山ネット懇及び広域連合実施地域などの事例調査を加え、国内の既存の権利擁護システムの分類を行う。また、追加の調査として、権利擁護システムを人口の多寡にかかわらず開設している北海道南富良野社協を調査しその持続可能性について分析を試みたい。 ②A市での権利擁護システムの試行的開始の経過とその分析、およびシステム構築のためのサポートと分析を行う。A市の権利擁護システムの試行については立ち上げ準備からコミットし支援を行ってきた。現在、4名の専門職でF県内初の行政内設置の権利擁護システムの専門部署を開設した。しかし、この部署が権利擁護システムを直営で進めるのではなく、システムを創設し特定非営利活動法人への委託を予定している。つまり権利擁護システムの原型を作り、適切な委託先を検討していくことを目的として平成26年4月から試行段階に入っている。このようなシステム作りの手法も一つの在り方として検討できるため、構築支援と分析を行う。 ③韓国成年後見制度開始後の分析についてその状況及びコミュニティの各種福祉センターの機能を参考に分析を継続していく。 ④権利擁護システムの担い手である市民後見人の養成では養成実施機関の現状・課題についてヒヤリング調査などを予定している。これら4点を中心に研究をまとめていく予定である。
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[Presentation] ソーシャルワークと隣人2014
Author(s)
鎌田真理子
Organizer
日本ソーシャルワーカー協会
Place of Presentation
全国大会・仙台大会・仙台ガーデンパレスホテル
Year and Date
20140517-20140518
Invited
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