2011 Fiscal Year Research-status Report
韓国における学校社会福祉事業に関する研究~政策と実践の関係性の視点から~
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23530747
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
大門 俊樹 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (80594647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交流 / 韓国 |
Research Abstract |
平成23年度はまず、韓国から何を学んでいくことが必要かを再検討した。8月の韓国調査では、韓国学校社会福祉士協会(以下協会)関係者との打ち合わせにより韓国における学校社会福祉事業体系の確認、ハンブク大学ジョ・ソンシム教授と学校社会福祉士へのインタビュー、協会主催のPower Internship参加により、学校社会福祉士へのスーパービジョン(以下SV)の実態調査について把握した。 帰国後、8月調査で得た各種文献研究により、学校社会福祉事業の発展過程の再確認と、保健福祉部・教育科学技術部共同事業(以下共同事業)の成果と課題について把握した。 3月調査では、協会関係者と学校社会福祉事業とそのSVの現状確認、スンシル大学ノ・ヘリョン教授へのSVに関するインタビュー、ソンナム市への地方自治団体支援事業に関する現地調査、教育福祉優先事業・We-start事業を行う学校や地域への訪問と学校社会福祉士へのインタビュー、協会会長経験者2名への共同事業の成果と課題についてのインタビューなどを行った。 以上により本年度の成果を整理すると、まず、学校社会福祉事業体系の再確認とその発展過程の再整理ができたことである。この点については、2012年4月刊行の「国際社会福祉情報第35号 スクールソーシャルワークの今」において、「韓国の学校社会福祉(学校ソーシャルワーク)」として発表した。第2に、韓国におけるSV実施の状況が明らかになってきた。韓国においては、SVへの高いニーズがあるにもかかわらず、SV体制は未確立であり、協会主導の課程はあるが事業によりSVの実施状況に差があり、SV体系を定着させるためには制度的後押しが必要であることがわかった。第3に、共同事業の成果と課題が明らかになってきたことである。第4に、第2年次以降の課題である各種事業の本格的調査のための人脈が得られ、その準備が整ったことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、平成23年度中に保健福祉部・教育科学技術部共同事業(以下共同事業)と地方自治団体支援事業についての調査・研究を進める予定であったが、地方自治団体支援事業は平成24年度に回すこととし、同年度には同事業及び教育福祉優先支援事業の調査・研究を行うこととした。その理由としては、(1)所属大学の通学課程の日々の授業、通信教育課程のスクーリングや実習指導をはじめとする学生指導など、業務が予想外に多忙であったこと、(2)精神保健福祉士国家資格の取得に挑戦したこと、(3)基盤研究(B)として、「スクールソーシャルワーカーの専門性向上のためのスーパービジョン・プログラムの開発」(研究責任者:門田光司)の研究を分担者として行ったこと、(4)日本財団助成事業として、「独立型社会福祉士(ソーシャルワーカー)事務所における実習施設としての活性化と費用対価の検討」の研究を分担者として行ったことなどがあり、思ったように自身の研究への時間が割けなかったことが挙げられる。また、当初予定していた3回の韓国調査が業務等の状況により2回にとどまったことや、韓国語文献の翻訳に予想以上の時間を費やしたことも挙げられる。 しかし、本年度中に平成24年度調査・研究予定の2事業の関係先への訪問を行うこともできたため、計画を修正しながらも、平成24年度を3カ年計画の中心と位置づけ研究を進めたいと考えている。また、1年目は戸惑いも多くあったが、2年目となり研究費の執行にも慣れてきたため、今後はより計画的かつ積極的に研究を進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、地方自治団体支援事業と教育福祉優先支援事業に関する調査・研究を行う。まず文献研究により、両事業の成立過程と考え方、事業内容の整理をする。その後、8月(予定)に両事業に関する現地調査として、韓国学校社会福祉士協会(以下協会)関係者との打ち合わせ、両事業実施地域への現地調査、地方自治団体関係者・学校社会福祉士・関係教員などへのヒアリング等を行う。地方自治団体支援事業については、平成23年度に訪問したソンナム(城南)市をはじめ、スウォン(水原)市、ヨンイン(龍仁)市への調査を試みる。教育福祉優先支援事業については、前年度訪問したポンウォン地域での調査を計画している。また、同事業は現在、学校社会福祉事業の中心的役割を果たしており、他事業よりも継続的な調査・研究が必要であると思われるため、協会を通した量的調査(アンケート等)・質的調査(複数の学校社会福祉士へのインタビュー等)・事例研究などについても検討したい。 8~12月には、両事業に関する文献研究と、8月調査のまとめを行い、3月(予定)にはその内容をもとに、韓国で協会関係者及び大学関係者へのヒアリングを行い、本年度のまとめとともに、次年度の準備のため、We-start事業・Dream-start事業などの文献研究に入る。前述の量的調査・質的調査・事例研究については次年度も継続して行う可能性もある。また、平成24年度は、学会発表なども積極的に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は180,650円が未使用に終わり、次年度に使用することとした。これは、当初韓国への調査を年3回計画していたものの、大学の業務その他の関係で2回にとどまったこと、翻訳依頼の回数が予想よりも少なかったことに起因する。 平成24年度については、地方自治団体支援事業に加え、教育福祉優先支援事業に関する調査・研究も行うことにする。すなわち、平成24年度が3カ年の研究の中心となるため、計画的かつ積極的に予算を執行したい。具体的には、韓国調査に十分な日程を確保すること、必要な韓国語文献について積極的に翻訳依頼すること、国内の関連文献についての積極的に購入し研究することにより予算を順調に執行したい。また、平成25年度調査・研究予定のWe-start事業やDream-start事業についても時間と労力がかかることが予想されるため、可能な限り、平成24年度中に多くの文献を収集し、翻訳・内容分析を行うなど、若干予定を前倒ししていきたいと考えている。また、平成25年度が最終年度となるが、学会誌への投稿や報告書の準備作業に着いても、若干前倒しで進めていくことを検討する。 依然として大学業務の負担も重く、個人研究では限界もあると考えられるため、協力者に依頼できるところは依頼するとともに、代表者が在籍する東洋大学大学院博士後期課程の研究指導・支援体制も活用して効率的な研究を進めていくよう全力を尽くしたい。
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