2012 Fiscal Year Research-status Report
韓国における学校社会福祉事業に関する研究~政策と実践の関係性の視点から~
Project/Area Number |
23530747
|
Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
大門 俊樹 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (80594647)
|
Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交流 / 韓国 |
Research Abstract |
平成24年度は主に地方自治団体支援事業及び教育福祉優先支援事業についての研究を行った。平成24年3月調査をもとに、6月の日本子ども家庭福祉学会において、「韓国における教育福祉優先支援事業に関する研究―学校社会福祉事業との関連から―」、7月の日本学校ソーシャルワーク学会において、「韓国における学校社会福祉士へのスーパービジョンに関する研究―実践者へのスーパービジョンと実習生へのスーパービジョン両面からの検討―」と題して学会発表を行った。 8月の韓国調査では、韓国学校社会福祉士協会(以下協会)関係者からの聞き取り、ソンナム市関係者からの聞き取り、各種文献資料収集を行った。帰国後、「韓国学校社会福祉現場実習指導マニュアル」と「教育福祉政策論」の翻訳作業を行った。 10月の日本社会福祉学会においては、「韓国における学校社会福祉事業に関する研究―事業化直前からの歴史整理を通して」―と題して学会発表を行った。 2月には福岡市で、学校暴力予防を共通テーマとして、韓国協会関係者と日韓学校ソーシャルワークセミナーを開催した。 以上により本年度の成果を整理すると、まず、地方自治団体支援事業と教育福祉優先支援事業の現状と課題を把握できたことである。地方自治団体支援事業については単独事業としての進展が難しくなっており、水原市をのぞいて、教育福祉優先支援事業への統合が進んでいくものと思われ、今後は教育福祉優先支援事業を中心とした調査・研究を進める必要があると思われる。第2に、重要文献2冊の翻訳が完了し研究基盤が整ったことである。第3に、韓国協会との交流により、学校暴力予防を共通テーマとした共同実践研究の基盤が整ってきたことである。日本においては、いじめ対応のスクールソーシャルワークについての実践が求められるようになっており、同実践研究の持つ意味も大きいといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、平成23年度中に保健福祉部・教育科学技術部共同事業(以下共同事業)と地方自治団体支援事業についての調査・研究を進める予定であったが、地方自治団体支援事業は平成24年度に回し、本年度は同事業と教育福祉優先支援事業の調査・研究を行った。やや遅れている理由としては、①所属大学の通学課程の日々の授業、担当する4年生への指導、通信教育課程のスクーリングや実習指導をはじめとする学生指導など、業務が例年以上に多忙であったこと、②基盤研究(B)として、「スクールソーシャルワーカーの専門性の向上のためのスーパービジョンプログラムの開発」(研究代表者:門田光司)の研究を分担者として行ったことなどにより、思ったように自身の研究への時間が割けなかったことが挙げられる。また、韓国語文献の翻訳に予想以上の時間を費やしたことや、地方自治団体支援事業が縮小の傾向になってきたこともあり、調査自体が難しくなってきたこと、韓国調査が大学業務の関係と韓国の受け入れ側の事情もあり1回にとどまったことも起因している。 しかし、今年度は、前年調査の成果もあり、3回の学会発表を行うことができた。また、日本において韓国協会関係者とのセミナーを行い、これからの研究の方向性を定めることができつつある。来年度は最終年度となるため、3か年の集大成と位置づけ、学会発表や成果物作成を含め、より計画的かつ積極的に研究を進めていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、We-start事業・Dream-start事業に関する調査・研究を行うとともに、3か年のまとめを行っていく。まず文献研究により、両事業の成立過程と考え方、事業内容の整理をする。その後、6月に両事業に関する現地調査として、韓国学校社会福祉士協会(以下協会)関係者との打ち合わせ、両事業実施地域への現地調査、事業関係者、学校社会福祉士などへのヒアリング等を行う。特に、We-start事業との統合構想を含めたドリームスタート事業の現況、学校社会福祉との関連、ドリームスタートセンターの役割や他機関との連携、事例管理の状況などについての調査を試みる。8月(予定)には再度現地調査を行い、現在の中心的事業である教育福祉優先支援事業についての追加調査と、現職学校社会福祉士と大学(院)生へのスーパービジョン、学校暴力予防に関する予備的調査を、学校社会福祉士へのインタビューを通して試みる。 8~12月には、両事業に関する文献研究と、6月、8月調査のまとめを行うとともに、3か年の調査に関する分析を行い、日本における政策と実践に関するモデル構築や何らかの政策提言を検討しつつ、今後の研究の方向性についてまとめるため、報告書を作成し、関連学会における口頭発表や学会誌への投稿準備も積極的に行う。 1月には、韓国で学校社会福祉士協会及び関係者への最終ヒアリングと協力者へのお礼をする。2~3月には、報告書を完成させ、研究結果を考察するとともに、今後の研究課題も明らかにし、次回研究へとつなげていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は165,083円が未使用に終わり、次年度に使用することとした。これは、当初韓国への調査を年3回計画していたものの、大学の業務その他の関係で1回にとどまったこと、翻訳以来の回数が予定よりも少なかったことなどに起因する。ただ、国内において韓国関係者と交流を持ち情報交換もでき、前年調査により3回の学会発表を行えたことは大きな成果であった。 平成25年度については、We-start事業・Deram-start事業の調査・研究を中心としつつも、教育福祉優先支援事業についての追加調査、現職学校社会福祉士と大学(院)生へのスーパービジョン、学校暴力予防に関する調査など、関連課題が多くあるため、より積極的に予算を執行したい。また、報告書や学術誌への投稿など、成果物の作成にも積極的に予算を執行する予定である。より具体的には、本年度は3回の韓国調査を行うことを基本とし、十分な日程を確保すること、必要な韓国語文献については積極的に翻訳依頼すること、国内の関連文献についても積極的に購入し研究することが必要であると考える。 依然として大学業務の負担も重く、個人研究では限界があることも考えられ、協力者に依頼できるところはより積極的に依頼するとともに、代表者が在籍する東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻博士後期課程の研究指導・支援体制も活用して効率的な研究を進めていくよう全力を尽くしたい。
|
Research Products
(5 results)