2012 Fiscal Year Research-status Report
超高齢社会における福祉用具活用の実証的研究-わが国の介護問題の解決を目指して-
Project/Area Number |
23530752
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
大根 静香 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (70341857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅岡 淳子 聖徳大学短期大学部, 総合文化学科, 教授 (40331384)
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Keywords | 移動・移乗介護 / 福祉用具 / 介護保険施設 / 高齢者介護 |
Research Abstract |
わが国の介護の現状は、介護職の離職率の高さや人材不足、老老介護など介護力の低下が問題視されている。介護職の離職の理由に、腰痛をあげているとも先行研究などで明らかにされている。その対策として政府は、福祉用具の活用を推奨しているが、介護保険施設などでは十分に普及されているに至っていない。 そこで本研究では、それらの諸問題を解決するために、3年計画で移乗・移動用の福祉用具を介護現場に普及することを目的に、実践的調査を行うことである。研究計画の1年目は、介護従事者の福祉用具のイメージを把握するためパイロット調査を行い、調査票の確定を行う。2年目は、量的調査を行うため、福祉用具の活用対象者のリクルートをすすめ、調査に入る。3年目は調査結果をまとめ、学会発表や論文投稿、講習会などで発表し、普及活動をしていく予定である。 1年目に計画した「福祉用具のイメージ」は、スムーズに行える、威圧感はあまり感じないといった肯定的な回答だった。また、使用する場合は、移動の速度を速めない、ある程度のボディタッチを確保したうえで行うことが安心感を与えるという新たな結果を得ることができた。これらの結果と先行研究をもとに、研究協力者などと調査票を検討する段階で終了した。 2年目である24年度は、調査票の確定と介護現場のリクルートをすすめる計画である。調査票の確定については、研究協力者などと検討を重ね、確定することができた。また、介護現場のリクルートにあたっては、まず、実際に使用する福祉用具を一式購入し、使用方法の映像化を行い、使用方法が容易にわかるように作製を行った。現在、調査協力の依頼を行っている最中であり、回答待ちとなっている。また、福祉用具の使用に際しての購入とリースについて業者と調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
24年度は、福祉用具の活用対象者のリクルートをすすめ、現地調査に入ることを計画していた。しかし実際は、調査票の確定、介護現場のリクルートを依頼するまでにとどまった。 遅れている理由としては、1つに、調査票の確定に時間を要したこと。計画当初では、介護現場の職員を対象としていたが、福祉用具の購入や介護に対する指針を示すにあたり施設長の意向が多分に影響していることを踏まえ、急きょ施設長も対象とすることに変更し、質問票を作成したことも影響したと思われる。2つ目に、福祉用具の活用対象者のリクルートをするために、事前準備に時間を要したこと。実際に使用する福祉用具がどのようなものか容易にわかるように、福祉用具を活用しているところを撮影し、映像化を計画していたが、購入に当たり、一部カスタマイズを依頼した福祉用具(乗助さん)もあり、納入に時間を要してしまった。また、介護保険施設に依頼をする際に、福祉用具の写真と映像化したものを送付するため、複数必要となり、作成に時間を要した。3つ目に、現地調査のリクルートに際して、選定を再検討したこと。計画では、研究代表者所属の大学で介護実習を委託している施設に重点的に依頼をする考えでいたが、福祉用具の現状や認知度に対する先行研究は皆無に等しいため、より多くの施設に調査依頼をすることに再検討を行った。その際、質問票を実施した後に、福祉用具を活用する計画でいるため、搬送などが可能な施設を選定するのに時間を要した。4つ目に、今回リースの対象となっている福祉用具の一つ(乗助さん)がカスタマイズしたものであることや、業者が過去に扱ったことがない福祉用具だったこともあり、リースの調整に困難を極めている状況で解決策に現在も時間を要していることにある。以上、4つの理由があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点の課題は、現地調査のリクルートと福祉用具の購入およびリースの進行が遅れているため、その解消に積極的に取り組むことである。その方策として、現地調査のリクルートに関しては、現在回答待ちとなっているが、研究強力者などを積極的に確保し、本研究の趣旨と福祉用具の活用への理解を目的に、多数の施設に出向し説明と協力を仰ぐ。また、福祉用具購入およびリースについては、現地に敏速に導入できるように業者と話し合いを設け、解決に向ける。以上の方策をはかり、遅れを取り戻すよう努力をする。 最終年度である3年目は、調査結果をまとめ、学会発表や論文投稿、講習会などで発表、普及活動を計画している。24年度は、推進力に欠けていたため、研究協力者の確保に努め、現地調査をはじめ、普及活動などにもすみやかに行えるように体制を整える。 25年度の前半は、研究協力者とともに、多数の介護保険施設に同時進行で現地調査を行い、調査の結果のデータ入力、分析とまとめを行い、国内外の文献と比較・検討を行う。また、その成果を学会や論文投稿などで発表する。後半は、普及活動に重点をおく。これは、福祉用具を実際に体験し、利便性や腰部負担感の有無などを会得してもらうためである。介護の提供場所は、在宅と施設におおむね分かれているが、在宅で介護を行っている人たちを対象にする場合には、社会福祉協議会や地域包括支援センターなどに福祉用具を使った移乗・移動の介護の講習会の企画を持ち込み、在宅で介護を行っている方々に知らせる方法をとる。また、介護保険施設等で従事している介護職員等を対象とする場合には、代表研究者が所属する大学の卒業生をはじめ、近隣の介護保険施設に案内状を発送し、大学で講習会を開催し、普及活動を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越金が2,537,984円発生した。これは、福祉用具の購入およびリースとしての経費が未払いになっているためである。購入する福祉用具(スライディングボード、スライディングシートなど)に関しては、問題がないが、リースをする福祉用具(乗り助さん、ラクーネ、介助用車いすなど)の内、乗り助さんはカスタマイズしたものであるため、業者がどのような形でリースをすべきか(計画としては10台リースをする予定)方向性が見いだせずにいること、またリースではなく購入した際には、保管場所をどうするかなどの問題もあり、業者との調整が難航を極めている。この問題が解決できれば、繰越金のほとんどがそれにあてがわれる予定である。 25年度の研究計画は、現地調査と学会発表や論文投稿、普及活動である。それらの計画で研究費を使用する内容は次のとおりである。現地調査では、1.推進力をあげるために、研究協力者の確保、2.調査票の印刷および発送作業、3.調査協力者に対しての謝礼、4.現地調査における連絡調整と出向、5.調査結果のデータ入力、分析とまとめなどに使用する消耗品の確保などである。学会発表や論文投稿では、1.学会へ参加、2.論文投稿するための消耗品の確保、3.国内外の福祉用具の先行研究を精読し、移乗・移動介護の介護力向上について方向性を示唆するために文献の検討を行うなどである。普及活動では、1.企画書の発症作業、2.研究協力者の確保、3.講習会開催場所への出向などである。これら、それぞれに関連し、物品費、旅費、人件費、謝金、その他などに充てる予定でいる。
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