2011 Fiscal Year Research-status Report
保育所における1,2歳児担当保育者の疲労感と子どもの心身の安定に関する研究
Project/Area Number |
23530754
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
西 智子 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (70383445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津留 明子 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (30439004)
高尾 公矢 聖徳大学, 人文学部, 教授 (50167483)
高橋 健一郎 聖徳大学, 児童学部, 講師 (10588122)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 保育者 / 子ども / 安定 / 疲労 / 仕事量 |
Research Abstract |
本研究は、保育所における保育者の疲労感が子どもの心身の安定にどのように影響するのか、保育者の仕事量に着目し、保育の質を保ちながら子どもが安定して過ごせるための条件を検証するものである。23度の計画内容は、長時間保育における保育者の疲労感が、子どもの状態と保育に及ぼす影響について検討することであった。 一次調査として、「保育者の疲労と子どもの状態」について、待機児童数の多い首都圏の保育所の保育者(常勤・非常勤)を対象にアンケート調査を実施し、回収した結果の基礎データ分析を行った。 また、首都圏の保育所と待機児童の少ない地方都市の保育所において、保育環境及び保育の実態についての聞き取り調査を実施した。加えて東京都内の保育所に勤務する園長及び保育士との業務の実態に関する意見交換を行った。並行して「保育者の疲労」及び「子どもの疲れ」に関する先行研究の検討を行った。 一次調査の結果、保育者の疲労感が子どもの状態と関連していることや、雇用形態による疲労感・負担感の差異などが明らかになってきている。保育者の疲労の原因については、個人的な要因のみでなく、仕事量や人間関係の要素などが関わっていること等をつかむことができた。また、保育者が子どもの状態を捉える時に、自身の疲労感によって影響を受けやすい傾向などが把握された。一次調査と聞き取り調査の結果から、二次調査の質問紙作成を行っている。保育者の疲労感の要因と子どもの状態の関係性を二次調査でより明確にしていくことで、重要な成果になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は一次調査を細部にわたり検討し、保育所に勤務する保育者の疲労の原因と子どもの状態の相関関係において、一定の成果を得ることができた。 当初の23年度の実施計画では、二次調査を3月までに首都圏の認可・認可外保育所500か所を対象にして行う予定であった。しかしながら、一次調査の結果から、1,2歳児保育特有の業務と疲労の関係(業務量と時間帯)を明らかにするためには、幅広く詳細なデータの必要性を認識するに至った。そのため、対象範囲を広げ、当初計画の4倍にあたる2,000か所の認可保育所を対象に1,2歳児担当保育者のデータを取る準備を進めている。 また、データ収集の時期に関しては、当初の予定の年度末(3月)では、子どもが1年を経て成長していること、保育者との関係もある程度できている時期になっているため、適切ではないと判断するに至った。調査時期は新たな入所児童を迎えた新年度以降、子どもたちの安定を図るべき時期を経た後が一番適切と判断し、二次調査を24年度当初に実施することにした。以上のような理由により、二次調査の時期が遅くなったため、研究自体が当初計画に比べるとやや遅い状況となっている。 二次調査の実施と分析を早急に行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、二次調査と聞き取り調査を行う。目的は、1,2歳児担当保育者に特有の業務がもたらす疲労感の原因と子どもの状態の関係性を明らかにし、保育の改善につながる要因を導き出すことにある。 二次調査は首都圏の待機児童の多い東京都・千葉県・神奈川県等の保育所を中心に、大規模(2,000か所目標)に実施する。1,2歳児担当保育者を対象に、低年齢児保育特有の業務内容と仕事量、及び1,2歳児を担当することで生じる疲労感と負担感の調査を行う。併せて、長時間保育における1,2歳児の子どもの状況と、子どもの安定に関する必要条件についての調査も行う。以上の調査の結果分析を中心に研究を推進する。 更に、調査分析と合わせて首都圏と地方都市の認可保育所において、聞き取り調査を行う。(長時間保育の状況:保育環境・保育者の状況・子どもの状態等) 聞き取り調査の目的は、保育所における1,2歳児担当保育者の仕事量の実態と保育者と子どもの関わりについての実態を把握することにある。保育者と子どもの関わりについて、デイリープログラムに沿って記録し、各仕事内容と仕事に要する時間についての詳細なデータを取る。聞き取り調査に基づき、保育者が子どもと関わる時間を精査し、1,2歳児の長時間保育モデルとしてのデイリープログラムを検討する。ここまでの研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、二次調査と、保育所の視察及び聞き取り調査を行うため、特に多くの経費が必要になる。大規模な二次調査のため、調査票の印刷費、郵送調査の通信費が多額に必要である。また、データ入力・分析に関わる研究補助者の人件費が必要となる。調査データの統計解析や、訪問調査法に関して、専門的なアドバイスを得るための謝金も必要となる。 保育者の仕事量調査のために、ビデオ・録音機等の機器の購入と、研究補助者雇用費が必要となる。首都圏の保育所に関しては、継続的に複数の保育所に通うために、旅費、交通費、謝礼が必要になる。聞き取り調査に関しては、地方都市の様々な保育形態・環境に関わる視察を行うため旅費が必要となる。その他、調査研究に必要な物品購入、通信費、交通費、学会発表、論文投稿、印刷費、複写費を必要とする。 23年度の繰越金は、24年度に大規模な二次調査を行うことになったため、通信連絡費として繰り越したものである。対象保育所が増えたことにより、増加が見込まれる通信連絡費の一部として使用する。
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Research Products
(3 results)