2011 Fiscal Year Research-status Report
医療化社会での自助集団の世界観の発展と再生:自死遺族と酒害者をめぐる比較事例研究
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23530756
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡 知史 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50194329)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 自助グループ / 自死遺族 / アルコール依存症 / 世界観 / グリーフケア / 医療化 / ボランタリズム / 当事者 |
Research Abstract |
本研究は自死遺族の会と酒害者の会という二つの自助集団を研究対象としている。その目的は、多様な問題を医療の問題として処理しようとする現代社会(医療化社会)において、自助集団が、当事者の生活課題解決に役立つ固有の世界観をいかに発展、維持あるいは再生させようとしているのかを探ることであった。当該年度に明らかにできたことは以下のとおりである。 まず自死遺族の会については、自死遺族の持続する悲嘆を病的なものとし、「グリーフケア」という専門的援助を関連知識と技術をもった専門職が対応すべきものと考える考え方を拒否していることが明らかになった。彼らは「悲しみもまた私たちのもの」「悲しみは愛しさ」「悲しみとともに生きる」という3つのフレーズで要約できるような世界観を発展させつつあった。しかしその自死遺族の運動は、自死を病的なものとすることによって、それを予防しようとする専門職とボランティアの集団と厳しく思想的に対立していた。 酒害者の会においては、会員のなかで、社会復帰を目指すことなく生活保護を受給したままで良いとする若年・中年層が増え、また体力・気力ともに限界が目立つ高齢者が増えることによって長い歴史のなかではぐくまれてきた健全なボランタリズムが衰退しているという危機感をリーダー層はもっていた。医療との連携を強化することによってこの危機を脱しようとする動きもあるが、かえってそれは問題の医療化を招き、会員が自らを「病人」とみることによって、ますますそのボランタリズムに陰りが出てきている。一部のリーダー層は会の再活性化のために新しい世界観を構築(あるいは結成当初にもっていた世界観を再構築)しようと奮闘していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3回の国際会議での発表、1回の国内会議での発表など、十分に研究成果を発表する機会があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
役員層へのインタビューを行い、それをもとに彼らの世界観を記述し、また、それについてのコメントを得るという繰り返しで、その世界観の追究を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、関東圏外に住むリーダーへのインタビューを行いたい。
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