2013 Fiscal Year Research-status Report
医療化社会での自助集団の世界観の発展と再生:自死遺族と酒害者をめぐる比較事例研究
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23530756
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡 知史 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50194329)
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Keywords | 自助グループ / アルコール依存症 / 自死遺族 / スピリチュアリティ |
Research Abstract |
2013年度において主要な実績は次のとおりである。第一に、6月にフロリダ、マイアミ大学で開かれた第14回 SCRA Biennial Conferenceに出席し、Richard Chenhallとともに断酒会についての研究発表「Danshu-do [The Way of Abstinence]: Reincorporating spirituality into a Japanese self-help organization for alcoholics」を行った。第二に、自助グループの研究の専門ジャーナル、International Journal of Self-Help and Self Care 7巻に「Self-Help Groups in Japan: Historical Development and Current Issues」を発表した。第三に、9月上旬に自助グループの国際的権威、Dr.Thomasina Borkmanを日本に招き、自助グループの研究会を開くとともに、現在の自助グループ研究についての意見交換を行った。第四に、11月2-4日にかけて和歌山断酒道場の参与観察を行った。11月17日には沖縄県で開かれた全日本断酒連盟の大会に参加した。12月21-22日には再び和歌山断酒道場に行き、そこでの研鑽を観察した。また3月中旬には、プラハで開かれた第4回 Global Conference on Spirituality in the 21st Century: Theory, Praxis and Pedagogyに参加し、断酒会のスピリチュアリティについて発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自助グループのイデオロギーと「医療化」とが衝突しているという仮説に基づき、この研究を始めたが、「医療化」に対抗する考え方、価値観としてスピリチュアリティがあるのではないかと考え始めた。2013年11月から参与観察を行った和歌山断酒道場では、スピリチュアリティが断酒のプログラムの中軸にあることがわかった。さらに2014年3月にプラハで開かれた第4回Global Conference on Spirituality in the 21st Century: Theory, Praxis and Pedagogyに参加し、スピリチュアリティについて集中的に考察を深めたが、日本の自死遺族の自助グループも、スピリチュアリティを鍵概念としてより深く理解できるのではないかと思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
断酒会、自死遺族の自助グループが、ともにスピリチュアリティを軸にして活動しているのだとすれば、「医療化」とスピリチュアリティとの関係はどうなのだろうかという疑問が出てくる。この点はAAの研究においてすでに充分に論議されたことだと思われるので、これは文献を集めて検討したい。また、断酒会、自死遺族の活動を、スピリチュアリティの観点から再度、インタビューをしたり、参与観察をしていきたい。すでに集めた膨大な資料も新しい観点から再検討することを試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実際には沖縄や仙台等、全国各地に行き、インタビューや参与観察等を行ったが、旅費として請求しなかった。その理由は先方から旅費を提供されたためである。 次年度は研究成果を国際的に発表するため、2回以上の国際会議に出席する予定である。そのための参加費や旅費として使用したい。
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