2011 Fiscal Year Research-status Report
日本のソーシャルワークにおけるコンサルテーションモデルの構築
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23530757
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
北本 佳子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (30296363)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / コンサルテーション / 地域生活 / 医療 / 経営管理 / 組織 |
Research Abstract |
今年度は研究初年度ということで、研究実施計画に基づき、ソーシャルワークのコンサルテーションに関する文献研究とインタビュー調査の実施を行った。文献研究については、以下で述べるインタビュー調査の枠組みを検討するための文献研究を中心に実施した。具体的には、当初計画していた医療分野・学校教育分野・司法分野・産業分野におけるソーシャルワークのコンサルテーションに関するサーベイと、組織の経営・管理面におけるコンサルテーションのサーベイを行った。その結果、医療分野以外におけるソーシャルワークのコンサルテーションに関する研究が非常に少ない一方で、日本の現状においては、今後の在宅医療の展開の中で医療と福祉(ソーシャルワーク)の連携が非常に重要であり、今後相互のコンサルテーションを含めた具体的な展開のあり方が求められていることが明らかになった。またその一方で、現在の日本の高齢者医療費の問題をはじめとする医療費の高騰などを背景に、在宅医療の展開のための組織の経営や管理のあり方も大きな課題となっていることが確認されるとともに、医療分野におけるソーシャルワークのコンサルテーションモデルを構築することが他の分野でのコンサルテーションモデルの構築のひな型になると考えられた。 そこで、今年度のインタビュー調査では、医療分野(特に在宅医療)におけるソーシャルワークのコンサルテーションに焦点を当てて、在宅医療にかかわりソーシャルワーカーとの連携等を行っている医療専門職(医師)8名(診療所医師4名、大学病院・総合病院医師4名)にインタビュー調査を実施した。現在、その調査内容はテープ起こしをして、大まかな分析を実施した段階であるが、その具体的な成果報告については、平成24年の7月にスェ―デンで開催される「ソーシャルワーク及び社会開発合同世界会議2012」で発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の文献研究は国内の研究調査に関しては比較的順調に実施することができたが、インタビュー調査の実施に関して遅れがあった。その理由は、前半には計画に従って、調査の枠組みを設定するための多様な分野(医療・学校教育・司法・産業)の文献サーベイを実施し、その中で医療分野(特に在宅医療分野)に絞ることにしたところまでは順調であったのだが、実際の医療分野におけるソーシャルワークのコンサルテーションに関して医療専門職(医師)へのインタビュー調査の実施にあたり、当初は夏休み中に実施することを計画していたのだが、協力依頼を予定していた医師がほとんど被災地での診療活動にかかわっていたため、勤務病院にいないか、いても診察時間以外の時間にインタビュー調査の協力を得ることができなかったためである。その後、実際に医師へのインタビュー調査ができたのは10月以降であった。ただ、インタビュー協力者数は当初の予定よりも多い人数の医療分野での協力者を得られたため、その部分ではよい評価ができるが、やはりインタビュー調査が遅れたため、当初は年度内にインタビュー調査結果の公表をする計画をしていたが、次年度の国際会議で発表することとなった。 なお、この国際会議での発表に関しては、すでに「ソーシャルワーク及び社会開発合同世界会議2012」事務局(スェーデン)より、平成24年3月16日付で発表受理の回答を受けている(Abstract id no:2439807)。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究を踏まえて、今後はその研究成果を公表するとともに、研究計画に基づいた研究を一部修正の上で実施していく予定である。具体的には、平成23年度十分でなかった海外の動向に関する文献研究と平成24年度の研究実施にかかわる文献研究等を継続的に実施するとともに、平成23年度の文献調査を通して、研究方法等に関する研究は文献だけでなくセミナーやワークショップ、学会参加を通した学習や調査が有効であると感じたので、平成24年度はそうしたセミナーやワークショップ・学会等への参加を通した情報収集やスキルの習得を図りたいと考えている。またそれと合わせて、平成24年度の大きな柱の一つであるコンサルテーション場面のビデオ分析を実施する予定である。 そのコンサルテーション場面のビデオ分析に関しては、申請時の計画においては、医療・学校教育・司法・産業の4分野におけるビデオ分析を実施する計画であったが、すでに述べたように、平成23年度の文献研究の結果、医療分野に絞った研究をする方向に一部変更をしたため、平成24年度のビデオ分析についても医療分野を中心としたビデオ分析(ソーシャルワーカーと医療分野の専門職の協働・連携場面:会議・面接・打ち合わせ等の場面のビデオ撮影とその分析)を実施する予定である。 また、その結果分析についても、できれば平成24年度内に公表できるようにするが、ビデオ場面の撮影の進捗状況によっては、結果の公表については平成25年度に持ち越しになる可能性がある。その後の研究についても、原則としては初年度・平成24年度の研究成果をふまえつつ、申請時の研究計画に基づいて研究を推進していく予定である。 なお、万一ビデオ分析の調査が協力者の問題等から予定通りに実施できない場合には、参与観察による調査と記録分析による調査を実施していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度については、初年度の研究成果の発表を海外(スェーデン)での国際会議で発表することを予定しているため、当初の計画よりも旅費の費用が多くかかるため、以下の理由で初年度に未使用となった研究費分を充当する予定である。 初年度に未使用となった研究費が生じた理由としては、第1には、初年度の文献調査では書籍購入による調査よりも主に論文や雑誌を中心に調査を実施したため、研究費の使用がデータベースの利用等によって少なく済んだことがあげられる。第2には、当初の計画ではインタビュー調査を医療・学校教育・司法・産業の4分野で実施する予定であったのが、文献研究での絞り込みによって医療分野に絞ることになったため、当初予定していたインタビュー調査にかかる費用(交通費・謝金・テープ起こし代など)が少なく済んだためである。 そのほかの使用計画としては、次年度は上記の「今後の研究の推進方策」で述べたように、研究方法の研究・習熟等に関しては文献研究だけでなく、セミナーやワークショップ・学会等の参加が有効であると考えるため、それらの参加に関する費用の支出と、ビデオ分析にかかる費用(ビデオ機器・交通費・謝金・テープ起こし代・消耗品等)の支出、結果発表のための支出を計画している。
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