2011 Fiscal Year Research-status Report
外国人介護労働者の送出し受入れ両国における人材斡旋事業者の機能役割
Project/Area Number |
23530784
|
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山田 健司 (山田 健) 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (00320664)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 香港・北マリアナ諸島・カナダ・インドネシア / 外国人労働者 / 介護労働 / 人材斡旋 / 人身売買 / NGO / 家事労働 / 人権 |
Research Abstract |
東南アジア受入れ国の主要国であり、NGOが集まる中華人民共和国香港特別行政区で2011年9月、香港中文大学と2つのNGOそれぞれと会合し、研究調査計画を構築し、一部実施した。その主たる内容は、(1)インドネシア国からの家事介護労働者の生活実態と斡旋事業者の営業活動およびリクルート、人材斡旋事業実態調査内容と先行調査のサーベイ。(2)外国人労働者とくに家事介護労働者の国際市場および斡旋事業者(人材派遣業者)の活動実態にかんするILOの調査研究活動内容についてのサーベイ、これにかんする計画予定カンファレンスについて。 2012年3月に、上記(1)調査の実施と(2)進行のために香港特別行政区へ赴いた。同時期にアメリカ領北マリアナ諸島サイパン島を調査のため訪問した。その主たる内容はつぎのとおり。(1)東南アジアで営業活動する人材斡旋事業者は主として中国系である。斡旋行為は、中国本土の事業者もしくは団体や個人が行なっており、その主たる受入れ地域のひとつが北マリアナ諸島であること。(2)アメリカ合衆国は、北米本土以外に安価な外国人労働者の受け入れ地域を設けており、事実上の人身売買のターミナルおよび経由地となっていること。(3)北マリアナ諸島は、中国、フィリピン、インド、インドネシア各国から斡旋事業者によって大量の労働者が移送されていること。(4)アメリカ合衆国は、ICEを設立して移民の受入れと退去に関するシステムの法制化を実施し、合法非合法両面において移民のコントロールを強化している。以上の事柄を東南アジアの労働市場と人身売買ルートの動向概要の一部として掌握した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度については、一部でやや遅れているが、全体としては順調に推移している。遅れている主たる事由は以下のとおりである。(1)斡旋事業者への直接的接触に困難性が高いこと。これは斡旋活動が非合法性が高い場合には従来の当該者への接触方法が閉ざされること、行方が不明となるケースがきわめて高くアクセス自体が困難になる。また会社組織などの場合は合法的営業活動であることが絶対的条件であることから、権利侵害などの非合法性を前提とすることは不可能であるとともに、NGO活動等からの追求をすでに受けていることから研究活動に対し相当に懐疑的かつ非協力的であることなどがあげられる。(2)被害労働者への接触ルートの構築に時間を要したこと(要していること)。被害者所在の掌握自体に困難性が高くまた当該者が接触を拒むケースが少なくない。これは斡旋事業者(個人や団体を含む)による報復や危害を加えられることへの恐れ、また自らへの反省や後悔の念が強いためと考えられる。さらには、被害事例が捜査当局や行政機関によって捜索や調査中であり、本人の保護や隠匿の必要から関係者への接触忌避がある場合が少なくないこと。 以上が、遅延の主な事由であるが、とくに被害労働者への接触は地元NPOやNGOとの協働関係を築くことができたため全般に順調に現在は推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、直接的な斡旋事業者への接触努力と方途を継続的に探索するとともに、とくに現地のNGOとの連携協働強化を推進していく。NGOの国際的ネットワークと国内ネットワークは高い角度で機能しており、斡旋事業者活動を的確に補足しているため複数のNGOから広範な情報を得ることが可能である。また同時に現地のコネクションを利用して調査研究を継続して推進していく。今後研究期間内の調査研究の課題はつぎのとおりである。(1) 中華人民共和国香港特別行政区におけるインドネシア人家事介護労働者にかかわる人材斡旋事業者の活動実態調査研究。(2) 北マリアナ諸島域における外国人被害労働者の事例聞き取り調査研究。(3) 北米カナダにおける斡旋事業者活動実態調査研究および特定州における斡旋事業規制州法の内容と運用機能実態の調査。(4) インドネシア国における斡旋事業者活動実態調査研究。(5) シンガポールでの高齢社会関連学会への参画と発表。(6) 日本における介護労働候補者にかかわる斡旋事業者活動内容について。 以上の課題をつうじて帰納法的に斡旋事業者の事業実態と機能役割を明らかにしていく。また日本が外国人介護労働者の国際市場に参入した場合に課題となる斡旋事業者関連事項について、先進国カナダなどの事例を東南アジア受入れ国と比較することによる仮説演繹的な研究を進展させ、確度と実効性の高度を保ちながら実質的課題を明らかにしていけるよう頑張りたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費使用計画の予定は以下のとおり。(1) 中華人民共和国香港特別行政区におけるインドネシア人家事介護労働者にかかわる人材斡旋事業者の活動実態調査研究:旅費・通訳費・現地NGO謝金(調査費)等。(2) 北マリアナ諸島域における外国人被害労働者の事例聞き取り調査研究:旅費・通訳費・現地NGO謝金(調査費)等。(3) 北米カナダにおける斡旋事業者活動実態調査研究および特定州における斡旋事業規制州法の内容と運用機能実態の調査:旅費・現地NGO謝金(調査費)等。(4) インドネシア国における斡旋事業者活動実態調査研究:旅費・通訳費等。(5) シンガポールでの高齢社会関連学会への参画と発表:旅費等。(6) その他(通信費等)。
|