2012 Fiscal Year Research-status Report
外国人介護労働者の送出し受入れ両国における人材斡旋事業者の機能役割
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23530784
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山田 健司(山田健) 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (00320664)
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Keywords | 国際情報交換 / 外国人労働者 / 介護労働者 / 権利擁護 / 斡旋事業者 |
Research Abstract |
今年度は、サイパンにおける外国人労働者の受け入れおよび人権侵害状況調査は継続して聞取りを行っている。 さらに夏季に北米カナダで行った外国人家事介護労働者市場における斡旋事業者活動に関する調査では、地元の労働組合とタイアップした調査を実施した。これとは別にトロント、モントリオール、ウィニペグの3都市において地元のNGOと接触しカナダの斡旋事業の実態を調査し資料を収集している。 総じて、労働関係法を適用している国と不適用の国での人権擁護の差異はきわめて大きく、労働者自身の生活に多大な影響を与えている。しかしながら適用国では非適用国と比較的に権利擁護の状況は安定しているが、当該国民との生活面での便宜や機会の均等付与についての格差は厳然と大きい。 斡旋事業者の活動は、一様ではなく、労働者の出身国、出身国内での階層、所有資格・技能、受入国内での近親者地縁者等の有無などによって多様化していると推察される。これらは、外国人労働者の延べ滞在期間、査証の種別、査証の延長および再発行回数、家族の入国状況などと強く相関していると考えられる。 また、受入国別つまり国単位で受け入れ状況や斡旋事業者活動に相違があるだけではないことが徐々に明らかになりつつある。たとえばアメリカ合衆国では、アメリカ本土とサイパン島アメリカ領とでは斡旋事業者の法的制約には大きな違いが存在している。これは地政学的な違いを主たる原因としていると考えられる。合衆国法では人権侵害を受けた外国人労働者を救済する法律が存在しており、当該法が事実上本国上陸のための選別機能を果たしている。さらにカナダでは、州別に受け入れ状況や事業者活動に違いがみられる。その原因は、労働力市場の状況の差異にあるといえる。つまり人口動態である。一国内における政策の違いは大きく、州ごとの政治行政政策の独立性を基礎とした労働政策の在り方はきわめて興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.メコン川流域諸国、具体的には労働者供給国としてのミャンマーおよび受入・中継国としてのタイにおける実地調査の実施が未定である。理由は、フィリピンおよびインドネシアの斡旋事業態と系列が異なるため、別途調査ルートを要すため。 2.家事介護労働者の外国人労働市場における最大供給国であるインドネシア国内の現況に関しては、出国前の教育およびリクルートに関する事項に斡旋事業者が関与しており、さらに政府機関との関連が予備調査で明らかになりつつある。これらに関する調査が未実施であるが、受入れ国内においてすでに就業中の労働者および日本から帰国した元候補者を通じて当該国内の実態に関する調査を準備中である。 3.日本国内における候補者および帰国者に対する調査は、予備調査の結果、リクルート形態による国家試験の合否および帰国意向に関する差異がきわめて大きな要因であることが判明したため、入国の経緯と帰国後の再入国に焦点を当てた調査内容へ転換する必要ができた。 上記の3点により、当初計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.海外調査研究:サイパン、香港、ミャンマー、インドネシアにおいて実施する予定である。各国研究者およびNGOの協力を得ながら推進する。 2.国内において介護労働者候補者および元候補者(帰国者を含む)に対する斡旋事業者との関係について調査を行う予定である。包括的な調査は、当該者全体に関わる方法や経路が見出せないため困難であるが、国内NGOに協力を求めて実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね海外調査研究に、年度予算の三分の二を当てる予定である。国内調査研究に三分の一を充当する予定である。
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