2011 Fiscal Year Research-status Report
新生児集中治療室入院児へのソーシャルワーク実践モデルの開発研究
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23530792
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
宮崎 清恵 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (90268558)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | M-D&D / 医療ソーシャルワーク実践モデル / ナビゲーションシステム / ハイリスク新生児 |
Research Abstract |
平成23年度はNICU入院中のソーシャルワーク実践モデルの精緻化を進めた。 具体的には、2011年3月に行った「第2回NICU入院児ソーシャルワーク研修」の効果について、セルフ・エフィカシーの指標を使用して分析し、その成果を2011年7月に開催された第21回アジア・太平洋ソーシャルワーカー会議で報告した。 第2回NICU入院児ソーシャルワーク研修参加人数は59人で、参加施設数は58施設であり、総合周産期母児医療センターの参加率は全施設の20.5%、地域周産期母子医療センターの参加率は7.4%であった。研修前後におけるNICU対応の自信度は研修後有意に増しており、またNICUケースヘの対応に関する特異的課題へのセルフエフィカシーは24項目すべてに関して講座を受けた後は有意に高くなっていた。 自由記述から、実践理論から援助手続きに至るつながりが分かりにくいという指摘があり、さらに援助手続きの枠組みの使用の仕方がよくわからないという指摘もあった。研究代表者が最終的に目指しているものは、援助手続きの標準的な枠組みを示すことにより援助漏れを起こさないようなチェックシステムを構築することである。しかし、研修で行った演習は、事例を振り返ることによる点検作業となっており、示された援助手続きは点検用の枠組みとして使用されたため、援助途中で使用するには記入に時間がかかりすぎるという難点があった。援助をガイドするものではなく「何を軸として援助を行えばよいか」を示したものであった。 以上の反省点を踏まえ、理論的な枠組みについてより実践と整合性がとれるように整えた。また、ナビゲーションシステムへ結びつける準備を行うために連携研究者、研究協力者、システム開発業者とで研究会を開催した。 改良された実践モデルについて平成24年3月に、3回目のNICU入院児ソーシャルワーク研修を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、M-D&Dの土台ともいうべき包括的実践理論と限定的実践理論の文献研究に時間をかけた。ガイドブックの土台になる部分である。また、現任の医療ソーシャルワーカーの研修内容をさらに質を高めるため、2011年3月に開催した研修の効果分析に時間をかけ、2012年3月に行った第3回目の研修準備に時間をかけた。 2010年7月、2011年3月、2012年3月と3回の研修を行って明らかになってきたことは、ハイリスク新生児が集中治療を受ける場であるNICUのチームにソーシャルワーカーが十分にかかわることができていないためその機能を発揮していないという現実であった。ソーシャルワーカー自身が「何をしていいのかわからない」段階であるためである。 当初の予定では退院後の長期にわたる生活支援についてのかかわりの局面と援助の構成要素を質的研究によってさらに進める予定であったが、危惧していたように医療ソーシャルワーカーが計画的に退院後の支援を継続して行えていない現状があり、研究方法と対象の変更が必要であると考えた。 しかし一方で、虐待を受けて入院してくる子供へのチームでの対応の重要性は医療スタッフ間で共有されてきており医療ソーシャルワーカーのかかわりが増えている。また被虐待児に新生児期にNICUに入院していた子供が多いというデータもあり、NICU入院児への退院後の継続支援は、虐待予防という視点から考えると関わることの意義は大きい。 ガイドブックに、NICUに入院する前から退院後の長期の援助までを記載するべきか、それともまず、入院中の援助について詳細に記すべきかが定まらずガイドブックの作成には至っていない。研究の最終目的である、ナビゲーションシステムを出生前、NICU入院中、退院後と作成するべきか、まず、NICU入院中に焦点化して作成するべきかについてはさらに考察を行う必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ガイドブック作成を行う。その際に実践モデルの内容である、(1)拠って立つ理論、(2)実践の対象、(3)実践モデルの対象、(4)実践の意義、援助手続きの枠組み、(5)実践モデルの有用性を示す必要がある。加えて実際に援助を行う上で必要となる援助手続き部分をさらに精緻化し、援助ガイドを適時示しながら、それを見るだけで標準的な援助を行うことができるようなガイドブックの作製を目指す。 それらについてはエキスパートソーシャルワーカーと研究会を行ったり、研究代表者がエキスパートソーシャルワーカーとインタビューを行う過程で作成する。 援助手続き部分に関してはまずNICU入院中に関するものを作成し、その期間の援助につながる援助期間として、母の妊娠中からのかかわりの局面と、NICU退院後の援助についての視点を示す。可能であれば母の妊娠中における援助手続きと、NICU退院後の援助手続きについて期間を限定して、あるいは目標を限定して記述する。 次にガイドブックの内容をシステムへ落とし込むための項目を確定させ、データベースと援助ガイドが連動していくシステム仕様の策定を行う。 ナビゲーションシステムのアウトラインができれば、それを使用してのワークショップを行い、その効果を確認し、さらに改良を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究協力者との研究会を数回程度行う予定である。全国に協力者がいるため、一堂に会しての研究会は数回程度であるが、その他研究代表者がエキスパートソーシャルワーカーのインタビュー調査(NICU入院前と、退院後のかかわりの局面と援助の構成要素の明確化およびNICU入院中の)に出張するための謝礼金と旅費が必要となる。 紙ベースでガイドブックを作成するための印刷費用がかかる。 システム開発の準備段階での使用策定作業に関する業者への謝金が発生する。さらにシステム開発業者との打ち合わせのための旅費も発生する。 研究協力者に貸与するためのパーソナルコンピューター及びファイルメーカーソフトを購入する費用が発生する。
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Research Products
(2 results)